この記事は住み替えに関する記事の第1部「住み替えする時の基本的な考え方」につづく第2部です。
住み替えにより新しい家を購入する時の、実践的な手続きや注意したいポイントなどを解説しています。
住み替えに関して基本的な考え方を知りたい場合は、第1部の記事をお読みください。
買い換えにはたくさんのパターンがある
住宅を買い換える住み替えには、次のようなさまざまなパターンがあります。
現在の住宅 | 住み替え予定の住宅 | |
住宅ローン | 完済している | ローン利用なし |
ローン利用あり | ||
残債がある | ローン利用なし | |
ローン利用あり | ||
住宅の種類 | 一戸建 | 一戸建 |
マンション | ||
マンション | 一戸建 | |
マンション |
それぞれのパターンで住み替えの手順は異なりますので、パターンごとに解説をすすめていきます。
まず大きな分類として住宅ローンを完済している場合は「パターンA」とし、残債がある場合は「パターンB」としますので、次のリンクから該当するパターンをタップしてください。
パターンA:住宅ローンは完済している
パターンB:住宅ローンの残債がある
住宅ローンは完済している
売却する住宅のローン返済が終わっている場合、住み替える住宅の資金計画により次のように3つのケースがあります。
- 住み替える家を手持ちの資金で購入するケース(このケースにすすむ)
- 住み替える家の購入に売却して得た資金を充当するケース(このケースにすすむ)
- 住み替える家を住宅ローンを利用して購入するケース(このケースにすすむ)
1.住み替える家を手持ちの資金で購入するケース
住み替える家を手持ちの資金で購入する場合、現在の家に住みながら物件探しを行い、よさそうな物件を見つけたら購入するかどうかについて検討します。
物件の探し方としては次のような方法があります。
- 不動産ポータルサイトや特定の不動産会社のサイトで探す
- 特定の不動産会社に希望条件を伝え物件を探してもらう
- 新聞・チラシなどから情報を収集する
- オープンハウスなどの広告を入手できたら見学に行く
物件の種類には新築と中古がありますが、考え方は同じですので、ここでは中古物件をイメージして話をすすめていきます。
よさそうな物件がみつかり真剣に検討をする場合は、次のステップに移ります。
住み替える家を購入する方法
インターネットなどでよさそうな物件をみつけた場合には、その物件を扱っている不動産仲介会社に連絡し、内覧や物件の詳細な説明を依頼します。
オープンハウスの見学に行き、よさそうな物件だと感じた場合は、オープンハウスを主催した不動産仲介会社から説明を受けます。
物件の内部や外部、設備などをよく確認し、不動産会社からの説明を聞き疑問点や不安点がなければ「購入申込」をします。
「購入申込」は、まだ契約ではありませんので、なんらかの名目の金銭を支払う必要はありませんが、新築分譲物件などの場合には「申込証拠金」といった名目で、不動産会社が金銭を預かるケースがあります。ただし「申込証拠金」は、申込をキャンセルすると戻ってきます。
購入申込の時点で申込書には次のような事項を記載します。
- 購入希望価格
- 購入資金について
- 引渡希望日
このケースの場合は、購入資金は手持ち資金のため「現金」と記載します。大事なポイントは「購入希望価格」ですが、ここはすこし詳しい説明が必要なので別ページの「中古住宅の購入希望価格と売買価格はこうして決まる」を後でお読みください。(記事の最後に「関連記事一覧」を記載しますので、読み終わってからリンク先へ移動しましょう。)
購入申込書を仲介会社に渡して、あとは売主との交渉結果を待ちます。
売主が購入申込書にもとづき売渡しを承諾したら売買契約の準備をし、日程調整をしたうえで売買契約と決済・引渡しを行い、新しい住まいを手に入れることができます。
重要事項説明書の内容や売買契約の実際については「中古住宅の重要事項説明と売買契約」を後でお読みください。(記事の最後に「関連記事一覧」を記載しますので、読み終わってからリンク先へ移動しましょう。)
また購入申込みをしようとしている物件が、本当に購入してもよい物件なのか不安になる場合もあります。そのような場合は「インスペクションを活用した不安のない中古住宅購入方法」をお読みください。(この記事も関連記事一覧に記載します。)
住んでいた家を売却する方法
現在住んでいる住宅のローン返済が終わっていて、新しい家は手持ちの資金で購入できるパターンでは、新しい家に引っ越ししてから売却することができます。また新しい家に引っ越す前であっても、決済・引渡しが完了していれば安心して売却することができます。
住み替えには「仮住まい」が一般的に必要ですが、このパターンでは仮住まいの必要はありません。
売却するにはまず「不動産査定」を不動産会社に依頼するところからスタートしますが、詳しい手順は「自宅を売却する方法と手順」をお読みください。(この記事も関連記事一覧に記載します。)
売却後は翌年に「不動産譲渡所得」の確定申告を行います。居住していた住宅の売却ですので、譲渡所得から一定額が控除され譲渡所得税が減額されます。(一定額以内であれば課税額は0になります。)
詳しくは「居住していた住宅を売却した場合の譲渡所得」をお読みください。(この記事も関連記事一覧に記載します。)
住み替える家を手持ちの資金で購入するケース~まとめ
住み替える家を手持ちの資金で購入する方については、住み替えのプロセスであまり難しいものはありません。
重要なポイントは次の4つです。
- 購入する住み替え物件は、納得のできるものを時間をかけて探す
- 候補が見つかったら早急に検討し決断する
- 決断に迷う時は「インスペクション」の活用を
- 住み替え物件を取得できてからこれまでの住まいを売却する
その他この記事といっしょに読むべき住み替え方法の関連記事も参考にしてください。
2.住み替える家の購入に売却して得た資金を充当するケース
住み替える家の購入に、現在の住まいを売却した資金を充当するには、売却を先にすすめる必要があります。売却できてから新しい住まいの購入になります。
この順序はどのような場合でも変わることはありません。
売却してから購入するので、売却したあとは新しい住まいが決まるまで仮住まいをしなければならないのが、このケースの重要なポイントです。
居住中の家を先に売却するが家探しも同時に行う
住み替える家探しをしながらでもいいのですが、まず居住中の家を売却します。
売却と同時に家探しをするのは、仮住まいの期間をできるだけ短くするためです。タイミングがよければ売却と同時に新しい家の購入も可能ですが、厳密には引渡しを同時に行うことができないため、ごくごく短い期間であっても「仮住まい」は必要です。
たとえば、売却した家の引渡しの3日後に新しい家の引渡しができる場合は、引っ越し荷物は一時保管し、ホテルに2日間宿泊して住み替えを行うことが可能です。
このようなことができるため、新しい住まい探しと同時に売却のほうも進めていくのが賢い方法です。
ただし、不動産の売買契約は引渡しまでの間に「契約解除」になる可能性は0ではありません。また2件の家の引渡しのタイミングをできるだけスムーズに行うには、購入と売却を同じ不動産会社に依頼するのが、トラブルを防止できる最善の方法です。
そのために不動産会社の選び方を工夫するのが、このケースの大きなポイントです。
住み替え用の家探しをしている中で、よさそうな物件がみつかったら、その物件の仲介をしている不動産会社に売却を依頼するのです。
そして、新しい家の購入は『現在の家が売れた時』と条件をつけて購入申込をします。
不動産会社は、現在の家が売れる可能性、売れる価格、新しい家の売主は売却を急がない、などのさまざまな条件を検討して判断します。
家探しをしても気にいる物件が無い場合は、売却を優先させます。
居住中の家の売却を優先
新しい家探しはつづけますが、まず現在の家の売却を優先させます。そのためには仲介する不動産会社を見つけなければなりません。
家を売却するための第1歩は「不動産査定」を依頼するのですが、査定を依頼する不動産会社をどのように見つけるかが問題です。
不動産会社の見つけ方は「自宅を売却する方法と手順」をお読みください。(記事の最後に「関連記事一覧」を記載しますので、読み終わってからリンク先へ移動しましょう。)
居住中の家が売れたら「仮住まい」に引っ越しをし、引渡しをできるようにします。売買代金は引渡しの時に全額受領できるので、この資金が新しい住み替え用の家の購入資金になります。
住み替える家を探す方法
住み替える家を探すにはインターネットによる情報収集が最適な方法です。
その他、新聞折込や地元のフリーペーパーなどもありますが、ほとんどの情報はネットに掲載されています。オープンハウス開催の情報は、手軽に物件を見学できるチャンスなので積極的に活用したいものです。
収集した情報から良さそうな物件が見つかったら、購入申込みをして「物件を押さえる」ことは重要です。
仲介で売られる不動産の取引条件に関する交渉は、申込順が基本なので躊躇していると他の人に買われてしまいます。「購入してもいいかな~」と思える物件であれば、申込みをすることを前提で仲介会社に詳しい相談をします。
不動産の購入申込は契約ではなく「予約」のようなものです。条件が合わなかったら申込みはキャンセルもできるし、売主からキャンセルされることもあるので、あまり厳格に考える必要はありません。
もし、購入申込みをしようとしている物件が、本当に購入してもよい物件なのか不安になる場合もあります。そのような場合は「インスペクション(住宅診断)」を依頼することもできます。インスペクションの結果、やはり購入しようと決断するケースもあれば、申込をキャンセルするケースもあります。
インスペクションは物件の購入判断におすすめの方法です。
「インスペクションを活用した不安のない中古住宅購入方法」をお読みください。(この記事も関連記事一覧に記載します。)
インスペクションを実施するあるいは実施しないまでも、購入の決断をした時には購入申込をして売買契約の準備にすすみますが、まず売主からの売渡しの意思表示も確認しなければなりません。
そのために必要なのが取引条件の合意です。
とくに売買価格はもっとも重要なものですが、実際にどのように売買価格が決定するのか、そのプロセスについては「中古住宅の購入希望価格と売買価格はこうして決まる」を後でお読みください。(この記事も関連記事一覧に記載します。)
住み替える家購入と売却後の手続き
住み替え用の家が決まったら売買契約へとすすみます。仮住まいは非常に不便を強いられる環境になることもあり、新しい家の売買契約が具体的になってくると、気持ちも明るくなってくると思います。
新しい家の購入にあたっては、売買契約時に注意したいこともあります。
「中古住宅の重要事項説明と売買契約」を後でお読みください。(この記事も関連記事一覧に記載します。)
住み替え用の家を購入できたら住み替えは完了ですが、忘れてはならないことがあります。それは売却した家の「譲渡所得の申告」です。
不動産を売った場合に所得(利益)があると譲渡所得税が課税されます。ただし居住用の財産を売った場合には、譲渡所得から一定額の控除や税率が軽減される特例があります。
このような特例は確定申告をしないと適用できないので、売却した翌年の確定申告の時期に譲渡所得申告を税務署にするようにしましょう。
所得控除や軽減税率の詳しいことは「居住していた住宅を売却した場合の譲渡所得」をお読みください。(この記事も関連記事一覧に記載します。)
住み替える家の購入に売却して得た資金を充当するケース~まとめ
住み替える家を売却した代金で購入するケースでは、次のようなポイントが重要です。
- 現在の住まいをまず売却することが優先
- 販売中も新しい住まい探しは継続する
- 仮住まいは必要なので仮住まいの候補も同時に探す
- 住み替え用の家探しでは「インスペクション」の活用も重要
- 住み替えが完了すると不動産譲渡所得の計算を
その他この記事といっしょに読むべき住み替え方法の関連記事も参考にしてください。
3.住み替える家を住宅ローンを利用して購入するケース
このケースは家を売却した資金と手持ち資金を合わせても、住み替え用の家購入資金としては足りないため、住宅ローンを利用するケースになります。
手順としては『2.住み替える家の購入に売却して得た資金を充当するケース』とほぼ同じですが、住み替え用の家を購入する時点で「住宅ローン」の融資申し込みや金銭消費貸借契約のプロセスが加わります。
売却を先行しているので、住み替え用の家がみつかり購入申込を行います。売主からの売渡し承諾が得られた時点で住宅ローンの事前審査を申込します。
住み替え用の家を購入するための住宅ローン手続きは、一般的な住宅ローンの手続きと変わりません。
住宅ローンに関すること以外は2.住み替える家の購入に売却して得た資金を充当するケースと同じですので、こちらの記事をお読みになってください。
住宅ローンの残債がある
ここからは住宅ローンの残債がある場合の住み替えパターンになります。
また住み替え用の家の購入にあたっても、住宅ローンの利用が前提の方向けの記事内容になっています。
住宅ローンの残債がある場合の住み替えでは、次の2つのケースが考えられます。
1.売却によりローン残債をすべて返済可能なケース
売却により住宅ローンの返済がすべてできるケースでは、住み替え用の家の住宅ローン借入について、売却とは別に考えてもいいですし同時並行で進めていってもいいです。
売却できそうな価格とローン残高がほぼ同じかローン残高が多い場合は、買い換える家の住宅ローン手続きを並行してすすめる「住み替えローン」を利用します。
住宅ローン残高が当初の借入時の半分以下など、売却した場合に一括返済が可能な場合には、売却を開始するのと同時に住み替え用の家探しもすすめます。
売却と購入は不動産会社に仲介を依頼しますが、同一の不動産会社のほうがローンの手続きなどが便利になります。
また住宅ローンを融資する金融機関については、現在利用中の金融機関のほうが便利な面がありますが、必ずしも同じ金融機関である必要はありません。
住宅ローンの手続きは次の順番で行います。
1.売却して現在のローンをすべて返済
2.住み替え用の家をローンを使って購入
ではもう少し詳しい手順を解説していきます。
居住中の家を売却する
現在住んでいる住まいを売却し住宅ローンを完済すると、住み替え用の住まいのローン申込が可能になります。
完済するまでは住宅ローンを申込んでも審査が通らないので、住み替え用の住まいを探しはじめてもいいのですが、売買契約まで進めることができないため “参考” として家探しをします。
ただし「ダブルローン」を適用できる要件が整う方は、住み替え用の住まいを同時に探し住み替えしてから売却する方法が可能です。
現在の住宅ローンを返済しながら新しい家のローンを借りる方法です。
ただし現在の住まいが売れた時点で、現在の住宅ローンはすべて返済します。したがって、2つのローンを借りている期間は長いものではありません。できるだけ早く売却し住宅ローンを返済するよう努めることが重要です。2件分の住宅ローンを借りることになるので、住み替えローンよりもさらに審査は厳しくなりますし、返済額も大きな金額になります。現在のローンを返済しながら新しい住まいを購入することができるので、仮住まいの必要はまったく無くなります。時間をかけて新しい家を探し、引っ越ししてから売却すればよいので、心に余裕を持った住み替えが可能です。
さて、現在の住まいの売却は不動産会社に「不動産査定」を依頼するのがスタートですが、まず不動産会社を見つけなければなりません。不動産会社の見つけ方については「自宅を売却する方法と手順」をお読みください。(この記事も関連記事一覧に記載します。)
居住中の住まいの売買契約が締結されたら、住み替え用の住まいが購入できるまでの間生活する「仮住まい」に引越しします。そして住み替え用の家探しを本格的にスタートさせます。
住み替え用の家の探し方
住み替え用の住まいをどのように探すのか? もっとも効率の高いのはインターネットです。ほとんどの売買物件はポータルサイトに掲載されます。
ポータルサイトには全国の情報を網羅した三大サイトと、ある程度地域を絞ったポータルサイトがあります。
三大サイトとは以下のサイトです。
この他各不動産会社が運営するサイトにも物件は掲載されますが、たくさんの物件の中から物件探しが可能なポータルサイトが多く利用されています。
ポータルサイトでの物件探し以外で有力な方法があります。それは不動産会社に直接依頼して物件探しをする方法ですが、ポータルサイトには掲載されないような、優良物件を購入できるチャンスがあるのです。
詳しくは「本当によい物件はポータルサイトに掲載する前に売買されている!」をお読みください。(この記事も関連記事一覧に記載します。)
1.売却によりローン残債をすべて返済可能なケース~まとめ
これまで暮らしていた家を売却し住宅ローンをすべて返済、住み替え用の家をみつけて住宅ローンを利用して購入、仮住まいから新居に引っ越しをして住み替えは完了です。
このケースをまとめるとポイントは次の3つ
- 現在の住まいを先に売却し住宅ローンを返済する
- 新しい住まいを見つけて住宅ローンを借りる
- 住まい探しに「インスペクション」の活用も重要
その他この記事といっしょに読むべき住み替え方法の関連記事も参考にしてください。
2.売却代金では残債のすべてを返済できないケース
売買代金で現在の住宅ローンをすべて返済できない場合、手順は『売却によりローン残債をすべて返済可能なケース』と同じですが、新しい住まいの購入に通常の住宅ローンではなく「住み替えローン」を使います。
他の注意ポイントは売却によりローン残債をすべて返済可能なケースと同じです。
住み替えローンとは
「住み替えローン」とは、現在住んでいる住まいを売却した代金で住宅ローンをすべて返済できない場合に、残債務を新しい住まいのローンに上乗せする方法です。
通常の住宅ローンよりも借入金額が高くなるため、毎月の返済額も高く、金利が通常より高くなる場合もあります。つまり住宅ローン返済の負担が大きくなるので、審査が厳しくなります。
返済額に見合った収入が必要であり、なおかつ安定した収入が見込めるかが審査のポイントになるでしょう。
「売却」と「購入」をタイミングよく行えると仮住まいの期間が短くなりますが、そのためには信頼でき住み替えに慣れた不動産会社が仲介することが大切です。
住宅ローンを貸し出す金融機関からは、売却・購入が同一の不動産会社であることを求められますので、住み替え計画のスタート時点で慎重に不動産会社を選ぶ必要があります。
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