積水ハウスのウェブサイトを見ていて、オヤっと思ったコンテンツがありました。
今日はそのことについて取り上げてみたいと思います。
オヤっと思ったのはスローリビングです。
内部空間と外部空間との一体性
内部と外部の空間を一体的に捉え、境界としての開口部や壁の存在感を薄める手法は、かなり古くからあるコンセプトです。
その為に意識するのが“中間領域”と呼ばれる空間・・・日本には古くから“縁側”というものがあり、内と外をつなく空間的装置として機能してきました。
積水ハウスのスローリビングはまさにこの中間領域を具体化したデザインコンセプトで、同じような考え方はかなり古くから建築設計の場には存在していた考え方です。
積水ハウスはこの概念に加えて、居心地の良い場所の比較実験を通して、感覚的であった中間領域の概念を、科学的に実証したことが、2011年度のグッドリビング賞の受賞につながったようです。
スローリビングのデザインアイテム
スローリビングを構成するデザインアイテムとして積水ハウスが提案しているのが3つあります。
- 大きな開口部を可能にするフルフラットサッシ
- 最大幅8mになるフルフラットバルコニー
- 中間領域の日差しや降雨を制御するキャノピー
これらのデザインアイテムによって生まれるスローリビングですが、特に大切なアイテムがフルフラットサッシです。
リビングの床と中間領域の床に段差が無く、立ち上がりも無い。
完全にフラットの床を作ることがポイントになります。
*その為積雪地や寒冷地では、採り入れることが出来ないという一面もあります。
この他デザインアイテムとしてあるのが
- 格子
- ライトコート
- 天窓
いずれも光を制御し、中のような外のような空間を創り出します。
ハウスメーカーが発信するデザインコンセプト
実はハウスメーカーから、このような空間に関するコンセプトを提案するのは珍しいような気がします。
このようなコンセプトは、新商品の発表に際してつけられる“キャッチコピー”とは少し異質です。
直接的に購買意欲を刺激するものではありません。
企業イメージとか、住宅を供給する側の立ち位置を印象付けるといった効果があるのだと思います。
創業以来ずっとハウスメーカーのトップを走ってきた積水ハウスにとっては、“プレハブ住宅”とレッテルを貼られる企業群から、一歩抜き出たイメージを定着させるひとつの戦略が、スローリビングのようなデザインコンセプトの提案だったのでしょう。
スローリビングの認知度が高い
積水ハウスの戦略、みごとに成功しているようです。
ネット上での“スローリビング”に関する一般ユーザーの書込みは案外多く見られるし、記述内容は概ね肯定的な書かれ方をしています。
ただ、マイホームの新築時に最終的に“スローリビング”を採用するかというと、費用面でなかなか踏み出せないというのも実状のようで、スローリビングは検討段階の楽しかった夢のひとつとして終わっているケースも多いようです。
それでも、そんな夢を提案してくれるハウスメーカーが、日本の住宅の質を高める役割を担っているのかもしれません。
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