住生活に関する研究機関を自社内に設置するハウスメーカーを取り上げます。セキスイハイムの生産販売を行っている積水化学工業には「住環境研究所」という研究機関があります。1975年設立ですからすでに40年以上が経過しており、様々な研究結果がセキスイハイムの商品に活かされています。
この研究所内に2016年「生涯健康脳住宅研究所」が設けられ、高齢社会における住宅の新たな役割などについて研究が進められていくようですが、ここでは、最近の研究内容などを交えて「生涯健康脳住宅研究所」の概要を見ていこうと思います。
住宅が「脳」を変える!?~はホントか
生涯にわたって脳と身体の健康を保てる住環境の実現を目指して。
と「生涯健康脳住宅研究所」のHPに書かれています。
人生の半分ぐらいの時間を過ごす住宅。人の健康に大きな関りを持っていることは誰もが知っていることですが、日常の生活の中でそんなことを意識することはありません。
無意識の中で私たちは“住宅”という環境の影響を受けています。
その影響は健康的な生活を送る為に必須である“頭脳”の働きにも及んでいます。
住環境をより適切に保つことが、健康な生活には欠かせません。
特に高齢社会を迎えた日本においては、脳の健康に注目した住宅づくりが大切という考え方が「生涯健康脳住宅研究所」のテーマになっています。
生涯健康脳住宅研究所のおいたち
積水ハウス住宅カンパニー(セキスイハイム)は1994年に「加齢配慮住宅研究所」を設立しました。
この頃はバリアフリーというコンセプトが住宅に登場し、高齢者でも安心して生活できる住まいづくりという考え方が始まりました。
2年後の1996年には当時の住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構住宅金融支援機構)が、バリアフリー住宅加算を始めています。
「加齢配慮住宅研究所」はバリアフリーをテーマとした研究により、セキスイハイムが提供する商品開発に成果を活かしてきたわけです。
しかし、脚や腰の筋力が衰え手すりを付けたり段差を無くすなど、身体の変化に対処することも大切ですが、脚や腰の筋力の衰えを防止し、一定の身体能力を維持することも大切です。
「生涯健康脳住宅研究所」の設立については、対応から予防へと住まいの課題の重点が変化してきたことが、「加齢配慮住宅研究所」の研究に加えて新たな研究をスタートさせる目的とされています。
「産」「官」「学」の連携により生涯健康脳住宅の開発を行う
生涯健康脳住宅研究所は東北大学学加齢医学研究所と江戸川大学睡眠研究所を協業研究先とし、東北大学の瀧靖之教授が提唱している概念である、脳の活性化や機能維持のための重要な4つの項目に配慮した住まい
- 睡眠
- 運動
- コミュニケーション
- 食事(調理)
それらに配慮できる住まいに求められる3つの機能
- 配慮する4つの項目を保持・活性化させる建築的な仕様・仕掛
- 配慮する4つの項目からの生活の見える化
- 見える化データを元にしたサービスやアドバイス
を具体的な課題としています。
「生涯健康脳住宅研究所」の研究実績
「生涯健康脳住宅研究所」から発表された研究レポートが3つあります。
- コミュニケーションロボットの実証実験の開始 (2017.05.16)
- 4つの配慮の「コミュニケーション」がテーマの検証を行うもので、高齢者がコミュニケーションロボットとの会話によって、生活の質(QOL)の向上があったかを検証します。
高齢者を対象に自宅やディーサービス施設で実験を行います。
コミュニケーションロボットはNTT研究所の「corevo」関連技術を実装した、クラウドロボティクス基盤をインターネット接続で利用するものです。実験期間は2017年10月までの5ヶ月間でしたので、すでに実験は終了しています。 - 会話促進により生活改善の効果を確認 (2018.03.20)
- 上記の実証実験の結果レポートです。
コミュニケーションロボットとの会話により、独居高齢世帯(75歳以上)での睡眠状況の改善や生活上の改善効果が見られたようです。 - 中高齢者の自宅における運動に関する意識・実態調査を実施 (2018.09.27)
- 4つの配慮の「運動」がテーマの検証を行うもので、首都圏に住むセキスイハイム居住者14,000人を対象にしたインターネットによるアンケート調査。
調査の結果以下のような課題が見えてきたようです。
高齢者ほど日常の生活で運動をすることの重要性を認識しており、自宅で手軽に運動できるスペースや仕掛けの提案方法
ハウスメーカーも基礎研究が大切
新しい商品開発などの応用技術は基礎研究が無ければ花開かないもの。
今年ノーベル生理学・医学賞を受賞した 本庶佑さんも基礎研究の大切さを述べていました。
セキスイハイムが行っているこのような研究は、住宅を提供する企業として大切なことかもしれません。
成果を求めるスピードが速く目先の業績や利益が優先される産業界です。このような地道な研究が注目されることは少ないかも知れません。
住環境研究所のHPには次のような文章があります。
すでに世帯数を大幅に上回る戸数となった日本の住宅に、量から質への転換が求められて久しくなります。
なかでも現在求められている住宅の質とは、住宅そのものの「機能」もさることながら、周辺を取り巻く「住環境」を含めた「暮らし」の安心・快適に、その重心を移しつつあります。
ハウスメーカーのトップグループのひとつセキスイハイムです。
質の高い住宅をつくりつづけてほしいと思います。
参照 》》 住環境研究所
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