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中古住宅の瑕疵担保責任と既存住宅売買瑕疵保険の活用方法

新築住宅と同様に中古住宅にも瑕疵担保責任の履行を担保する保険制度があります。
中古住宅市場で販売される物件の中では、まだ少ないですが徐々に保険制度の認識が広まり、今後は既存住宅売買瑕疵保険が適用された物件が多くなると思います。

ここでは、既存住宅売買瑕疵保険がついた中古住宅にはどんなメリットがあるのか、デメリットは無いのか、保険付きの中古住宅は安心か、など購入を検討している方の参考になる情報をお伝えします。

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中古住宅の瑕疵担保責任

中古住宅を売却する売主は「瑕疵担保責任」を負う義務があります。瑕疵担保責任とはどのようなものなのかをまずみていきましょう。

瑕疵担保責任はなぜ必要か

中古住宅だけでなく不動産売買の対象物に対し、売主は「瑕疵担保責任」を負うことが義務になっています。

瑕疵担保に関する民法の定めに関しては、第560条から第578条までの【第二款 売買の効力】に書かれている条文が該当します。

民法第566条

瑕疵担保責任の目的は、買主が購入した不動産を利用や使用するにあたり、その目的を果たせない “隠れた欠陥など” があった場合に損害賠償や契約解除ができる権利を保護するためです。

瑕疵担保責任には特約により期限を設けたり免責にすることも可能です。ただし宅地建物取引業者が売主の物件に関しては宅地建物取引業法第40条により、引渡しから2年以上の瑕疵担保責任期間を設けるよう定めています。

宅地建物取引業法第40条

では、具体的に瑕疵とはどのようなもので、瑕疵を発見した場合はどのようにしたらよいのかについて解説します。

瑕疵と考えられる具体的な現象

瑕疵担保責任は売主の無過失責任なので、売主に過失がなくても責任を負います。ただし “隠れた瑕疵” について責任を負うもので、明らかになっている瑕疵については対象外(*民法改正前)です。

つまり欠陥などについて売主から買主が説明を受けている場合は、責任を負いませんので誤解のないようしてください。

では具体的な瑕疵現象について瑕疵担保責任を問えるかどうかみていきましょう。

雨漏り
雨漏りは瑕疵のなかでは深刻ですが、引渡し前に雨漏り現象がない場合は隠れた瑕疵があったとはいえず、引渡し後に劣化などの原因で発生したものと考えられます。
雨漏りと似たような現象に「すが漏れ」や「吹き込み」があります。屋根材に穴があいているとか傷や欠損があるなどの原因ではなく、屋根の構造や軒の構造により発生する現象です。
外気温や風の強さと向きなど、自然条件によっておこることがあり、瑕疵とはいえない場合が非常に多いです。
構造部材の腐食
木造住宅が多い日本では構造部材が腐食しているケースがあります。なかなか発見することがむずかしく、売主も買主もまったく知らずに売買していることが多いもの。典型的な “隠れた瑕疵” に該当しますが、瑕疵担保責任期間を特約で定めている場合、期間中にみつけることがむずかしいという問題があります。
シロアリの被害
シロアリの被害は構造部材の腐食とも関連し、住宅の構造的な安全性に深刻なダメージを与えます。構造部材の腐食を発見することから比べると、発見できる可能性はありますが、床下にもぐっての点検など素人ではむずかしい面があります。
給排水管の不具合
水漏れや排水管のつまりなどの現象です。水を流したり実際に使用すると発見できる瑕疵で、修理の負担をどちらがするかについて、あまりトラブルになることは少ないでしょう。
床や建物全体の傾き
床の構造部材の老朽化や基礎の不同沈下など、築年数の古い住宅にみられる現象です。すこし気をつけて物件を点検すると簡単に発見できる現象です。知らずに購入して入居後にトラブルになることもあり、内覧時など購入前に念入りに点検すると発見できるものです。
購入前に傾きを発見したとしても、修理費用は高額になるため現況のまま引渡しを受けることになるでしょう。

瑕疵担保責任をどのように問うのか

個人間売買であっても “3ヶ月間の瑕疵担保責任期間” を設定するケースが多くあります。知っていた瑕疵を説明せずに引渡しトラブルになるケースなど、売主に悪意がある場合なども含め、買主保護の観点からおこなっていると考えられます

売主が宅建業者の場合は最低2年間の責任期間があります。

では実際に引渡し後に瑕疵を発見した場合、どのように対処すべきでしょうか。

  1. 媒介業者に連絡する
  2. 売主が業者の場合は、業者または媒介業者に連絡する
  3. 瑕疵部分の修理にかかる費用を算出
  4. 修理費用の請求をおこなう

ここまでで売主が費用の負担に応じる場合は、次のどちらかの方法になります。

  1. 売主が工事業者を手配し修理をおこなう
  2. 買主が工事業者を手配し修理をし、工事代金を売主に請求する

問題となるのは修理費用を売主が負担しない場合です。

話し合いによる解決はほぼむずかしい場合は、当事者同士でなく第三者を介して解決する方法を試してみます。

上記で解決しない場合は “民事訴訟” を覚悟しなければならないでしょう。

民法改正により変わる瑕疵担保責任

2020年の民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わります。

変わるポイントを比較表にしたものが下表です。

瑕疵担保責任 契約不適合責任
法的性質 法定責任説 *特定物はそのままの引渡しで済むが、瑕疵担保責任を法により定めた 契約責任説 *売主には瑕疵のない目的物を引渡す義務がある
対象となる目的物 特定物 特定・不特定を問わない
権利行使期間 瑕疵の存在を知ってから1年以内に権利行使 種類や品質については1年以内の通知 *売主の悪意または重過失は期限なし 数量や権利については期限なし
消滅時効 引渡しから10年以内 引渡しから10年以内、契約不適合を知った時から5年以内
買主の手段 契約解除(契約の目的が達せられない) 損害賠償(信頼利益に限る、売主に無過失責任) 契約解除(契約の目的が達せられても不履行が軽微ではない) 損害賠償(信頼利益+履行利益、売主の帰責事由要) 追完請求(買主帰責事由不可) 代金減額(買主帰責事由不可)
責任を負う瑕疵の範囲 隠れた瑕疵(買主が契約時に知らなかった欠陥など) 隠れた瑕疵に限定されない

既存住宅瑕疵保険の必要性

民法改正により瑕疵担保責任を問われる範囲が広がり、追完請求や代金減額などの手段が増え、瑕疵の範囲も “隠れた瑕疵” に限定されません。売主の責任が問われるケースが増えると予想されます。

既存住宅瑕疵保険は中古住宅の売買において、売主が問われる責任を担保し買主への保証をおこなう保険です。

売主が宅建業者のタイプと個人のタイプの2種類あり、個人の場合は被保険者(契約者)が仲介業者になる場合と検査業者になる場合の2種類あります。

  • 売主が宅建業者
  • 売主が個人
    • 仲介業者が契約する
    • 検査業者が契約する
売主が個人 売主が宅建業者
被保険者(契約者) 仲介業者または検査業者 売主
申込できる人 売主または買主 売主
瑕疵保険に加入するには保険会社の検査を受けなければなりません。雨漏りなどの検査で問題になる不具合は補修しないと検査に合格しません。また現在の耐震基準に適合する必要もあるので、保険加入できない住宅もあります。

保険加入のために特別な工事が必要でない場合や、わずかな費用で補修できる場合は瑕疵保険に加入するほうが、買主も安心して購入できるメリットがあります。

既存住宅売買瑕疵保険の概要

瑕疵(かし)とはなにか?
住宅に関する瑕疵とは、雨漏れがするとか、床が腐っていて揺れるなど、本来の性能や品質を失ってる状態を言い、いわゆる“欠陥”の意味です。
欠陥と言っても雨漏れや構造体に関する部分を対象としていて、コンセントがすぐ外れるとか、照明器具のスイッチが壊れているなどの“劣化”は対象ではありません。
どうしてこの保険ができたのか
新築住宅は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって、売主または施工主は10年間の瑕疵担保責任を負っており、瑕疵を保証するための供託金または保証保険加入が義務付けされています。
対して、中古住宅には瑕疵担保責任について、中古住宅の売主が宅地建物取引業者である場合を除いて法律的な義務付けはありません。
*中古住宅の売主が宅地建物取引業者の場合は2年間の瑕疵担保責任を負います。スクラップ&ビルドからストック資産の有効活用へと社会が変化した日本において、中古住宅でも新築住宅のような瑕疵担保責任保険が利用できるようになると、円滑で安心な住宅流通が可能になります。そのような目的によって生まれたのが「既存住宅売買瑕疵保険」です。
保険をかける契約者はだ~れ
保険会社と契約をして保険料を支払う契約者は、中古住宅の売主が宅地建物取引業者の場合と、物件の所有者である一般の個人である場合によって異なります。

  • 売主が宅地建物取引業者の場合
    宅地建物取引業者が契約する
  • 売主が一般の個人の場合
    • 保険加入前に物件の検査をする検査事業者が契約する
    • 物件を仲介する宅地建物取引業者が契約する

*個人間の場合、通常は売主が保険加入を依頼しますが、買主が保険加入を依頼することも可能です。

どんな時に保険金が支払われるの
構造耐力上主要な部分に欠陥が見つかった時や雨漏れがあった時に、修補費用などが支払われます。(保険期間5年間)。保険会社によっては、給排水設備や電気設備に関する欠陥についても、保険期間は短いですが保証するケースもあります。

既存住宅売買瑕疵保険が適用できる中古住宅

保険加入できる中古住宅には条件があり、以下のことを満たした住宅でなければなりません。

  • 昭和56年6月1日以降の新耐震基準によって建てられた住宅
  • 昭和56年6月1日以前の旧耐震基準の場合は、平成18年国土交通省告示第185号に適合する耐震改修工事を行った住宅
  • 構造上主要な部分と雨漏れに関する部分を、検査事業者が認めた検査技術者が検査を行い、現況の性能が確認された住宅
  • 上記検査の結果、修繕工事が必要とされた部分の工事を行った住宅
  • 上記の修繕工事が必要とされた部分を、購入予定者が修繕を行うことを特約した住宅

既存住宅売買瑕疵保険のメリットとデメリット

既存住宅売買瑕疵保険の概要が分かったかと思いますが、それではこの保険がついた中古住宅を売却するあるいは購入する、売主さん買主さん双方から見たメリット・デメリットを見ていきます。

買主の立場から見たメリットとデメリット

買主の立場から見たメリット
  • 現況の性能を専門家が調査するので安心できる
  • 万が一、修繕工事が必要となった場合の費用負担が軽くなる
買主の立場から見たデメリット
  • 保険付きの物件を優先し、他の優良物件を見逃す可能性がある

買主さんから見た場合メリットばかりで、デメリットと言えるようなものは無いと思います。
強いてあげれば・・・という感じでデメリットを一つだけ挙げましたが、あまり気にするデメリットではないでしょう。

売主の立場から見たメリットとデメリット

売主の立場から見たメリット
  • 購入希望者に安心できる情報を伝えることができるので商談がスムースに進む
  • 売主が把握していない瑕疵があり、引渡し後に発見された場合でも、買主との間でのトラブルが回避できる
  • 物件状況を正確に知らせることができるので、希望金額で売却できる可能性が高い
売主の立場から見たデメリット
  • 検査費用や保険料が余分にかかる
  • 事前現況検査した結果保険が適用できないことがある
  • 事前現況検査の有効期間が1年間なので、検査後1年以内に引渡しできなかったり、状況に変化があって保険が適用できなくなると、検査費用が無駄になる

売主さんから見た場合は、買主さんほどのメリットは感じませんが、売りやすいとか早く売れるといった傾向は強くなると思います。

今後、この保険が広まっていくと、既存住宅売買瑕疵保険つきでないと売りづらいという時代になるかもしれません。

参考サイト
既存住宅売買のかし保険(個人間売買タイプ)【住宅瑕疵担保責任保険協会】
既存住宅売買のかし保険(宅建業者販売タイプ)【住宅瑕疵担保責任保険協会】

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