中古住宅を購入するさいに物件の現在の状況を点検・調査し、劣化の状態や不具合の存在などを明らかにし、購入にあたって詳細な検討をしやすくする方法があります。
「ホームインスペクション」または単に「インスペクション」と呼ぶ方法です。日本語では「建物状況踏査」や「住宅診断」などと言われます。
ここではインスペクションを活用して不安のない住宅の購入方法をお伝えします。
インスペクションとは?
住宅の点検・調査するのは「建築士」が行っていますが、1999年ころからこの仕事を専門に行う技術者集団が登場し、少しずつ全国に「ホームインスペクション」が広まっていきました。
インスペクションの具体的な内容
インスペクションは基本的に「目視」による点検や調査です。
使う道具はつぎのようなものです。
- コンベックス:寸法を測る
- 水平器:床の傾きなどを調べる器具
- 打診棒:モルタルやタイルの浮きを調べる
- 下地センサー:壁などの下地材や基礎の鉄筋の位置を調べる
- 懐中電灯:小屋裏や床下などの暗い部分を照らす
最低限このような道具を使いますが、インスペクター(調査技術者)によっては次のような器材を使うこともあります。
- サーモカメラ:室内の温度分布を調べる
- ファイバースコープ:壁内なで直接確認できない部分を調べる
調査時間は数時間で終了しますが「調査報告書」の作成に数日かかることもあります。
報告書には調査した部位で発見された劣化・不具合の程度を記載します。たとえば次のようなものです。
- 床・壁・天井のひび割れ
- 外壁のひび割れや劣化
- 基礎のひび割れや劣化
- 屋根葺き材の劣化
- 床や壁の水平度・垂直度
- 建具類の不具合
- 設備の不具合や水漏れ
- 雨漏れの痕跡
- シロアリ被害の痕跡
全体として傷み具合を調査し、劣化や不具合の原因がわかる場合はその原因と修繕に関するアドバイスを、原因のわからないものについては場合によって専門家の再調査をすすめられることもあります。
インスペクションにより依頼者が得るメリット
インスペクションは建築士が行うので、プロによる調査が何よりも大きなメリットです。さらに購入を検討している物件を扱う不動産会社との利害関係はなく、第三者としての立場から調査するので、調査結果に対する安心感があります。
インスペクションの結果により購入を中止するケースもあり、購入者によっては大きな決断をする過程で、第三者の意見を聞くことができる絶好の機会となるのです。
またインスペクションを宅地建物取引業法に基づいた制度を利用する場合は、調査結果は重要事項説明書に反映されるので、より安心した取引きができると言えるでしょう。
インスペクションのデメリット
インスペクションは住宅の売買取引において有意義な方法ですが、いくつかデメリットもあります。
- 費用がかかる:数万円
- 調査範囲が限定される:リフォームされた物件などは以前の状態がわからず、正確な調査をすることができないケースも
- インスペクションができない:インスペクションは売主の協力が必要なため、協力を得られない場合はインスペクションができない
インスペクションの依頼方法
購入を検討中の物件をインスペクションしてみたいと思われたら、まずインスペクションを仕事としている「建築士事務所」を探します。
探す方法は次の3つの方法があります。
- 既存住宅状況調査技術者検索
宅地建物取引業法に基づいたインスペクションを希望する場合 - 日本ホームインスペクターズ協会
宅地建物取引業法に基づいたインスペクションにこだわらず技術者を探したい場合 - 仲介する不動産会社に依頼
仲介不動産会社は媒介契約時点でインスペクションについての説明義務がある
インスペクションの活用を
宅地建物取引業法にインスペクションに関する事項が盛り込まれ、インスペクションを利用する買主そして売主が増加しています。
これまで住宅の売買取引に「建築士」が関与することはありませんでした。
住宅の売買は「宅地建物取引士」の責任により、公正な取引きができるようになっていますが、宅地建物取引士は建築士と異なり、住宅に関する技術的な分野についてはあまり詳しくありません。
インスペクションにより建築士も関わるようになり、より安心して売買取引を行うことが可能です。ぜひ活用してみてください。
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