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所有権移転の権利行使を阻害する一切の負担の消除とは

所有権移転を阻害する一切の負担を消除する義務は売主にあります。引渡しまであるいは引渡しと同時にこれら権利の抹消登記をしなければならず、媒介する宅建業者は媒介業務開始と同時にこれら権利の解除について調査が必要です。

所有権移転を阻害する権利については売主さんがご存じないとか忘れているものもあり、抹消登記に時間がかかるものもあります。
調査不足は取引が中断したり信用を失う危険性もあります。

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不動産取引において所有権移転までに負担の消除が必要な理由

所有権移転を阻害する負担に該当する登記された権利には、代表的なものに “抵当権” などがあります。
このような権利が登記されていると、所有権移転が阻害されるのは「優先権」があるからです。

【優先権】とは?
権利によって優先されるとか優先されないではなく、「先に登記された権利が優先」です。不動産登記法【権利の順位】

抵当権は現在の所有者または所有者と関係のある個人や法人が債務者となり、抵当権を保有する者が権利者となって登記します。
所有権移転によって所有者が変わると、新しい所有者は債務者とまったく関係がないので抵当権は無効になるように思いますが、登記された権利がなくなったり無効になったりすることはありません。

所有権移転の負担となる登記事項の種類

所有権移転の権利行使を阻害する抵当権や賃借権等は、不動産の登記簿に記載されるものです。登記簿には「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」という区分があり、これらの権利行使を阻害する不動産に関する権利の登記は、「甲区」と「乙区」に記載されます。
ここでは不動産売買にあたって媒介業者が物件の調査をする際、登記簿に関し気をつけたい事項をまとめてあります。

差押登記の抹消と所有権移転

債権者が債権回収の為に裁判所に申立てをし、不動産を差押えることにより「差押」が記録されます。
税金滞納による差押えは税金徴収権限のある国や自治体が裁判所を通さずに行う権限があります(自力執行権といいますが、その税金の徴収が法律で明文化されている場合に限ります)。尚その場合国や自治体は法務局への嘱託により登記します。

金銭消費貸借契約などによる抵当権や根抵当権にもとづく差押えの場合は、競売申立てと同時におこなうことが多く、裁判所による登記嘱託により登記がおこなわれます。
差押が登記された不動産の所有権移転は、差押を行った債権者に対する債務履行により抹消登記しますので、売買代金の中から債務を履行するのが基本です。
売買契約前に関係する債権者との交渉を行い、話がまとまれば売買契約へと進み、所有権移転登記と同時に差押抹消登記を行います。

破産登記の抹消と所有権移転

まず「破産」が登記されている物件について知っておかねばなりません。
破産の登記をおこなうのは所有者が裁判所による破産手続開始決定を受けた時です。ただし、所有者が法人の場合は法人登記簿に破産開始決定が記載されるので、不動産登記に破産を記録することはありません。

「破産」が記録される不動産は所有者が個人の場合です。
破産者の物件は破産財団として破産管財人に監督されるのですが、処分の難しい不動産の場合「破産財団放棄」といい、破産管財人の監督から離れる物件も多いと言われています。

「破産」物件の所有権移転に関しては、まず物件の処分権限が破産管財人にあるか破産者にあるかを確認する必要があります。
処分権限を有する人との商談の結果、売買が成立しそうになった場合、裁判所の許可が無ければ所有権の移転は出来ないので裁判所で売買についての確認が必要になります。

許可を受けて売買契約が成立し引渡しを受けると、所有権は移転されますが登記された「破産記録」はそのままになっています。
新しい所有者である買主にとっては「破産」が登記されたままでは気味の悪いものですが、破産の抹消はその次の手順になります。
所有権移転が為され新しい買主名義の登記簿謄本ができると、破産管財人は裁判所に対して破産登記の抹消を上申します。これによって破産の抹消が可能になります。

買戻が登記された物件の所有権移転

売主が当該不動産を取得した時に “買戻し特約付きの契約” により取得しているケースでは買戻特約が登記されています。
自治体や公社等公的な事業主が分譲する宅地や区分所有物件ではよくあることです。

宅地を購入した人が住宅を建てることなく他へ転売することを防ぐ為、引渡しから一定期間内に住宅を建てることを条件にします。
その期間内に住宅を建てない場合には買戻すことを特約条件としています。

その他、不動産を借金の担保として貸主に譲渡し、返済が完了したら買戻すというような場合に使われることもあります。
買戻特約登記の解除は買戻権者と事前に打ち合わせを行い、抹消の手続きも所有権移転登記までにできるように準備しておきます。

保全処分がある物件の所有権移転

仮登記や仮差押えなどの登記が保全処分の登記です。
種類としてはいろいろあり代表的なものは次のようなものです。

  • 所有権移転仮登記
  • 仮差押
  • 抵当権設定仮登記
  • 賃借権設定仮登記

(仮)の文字が付くのであまり重要ではないように感じますが、軽く見ていると大変なことになってしまいます。
仮の登記は本登記する権利が生じているか、将来生じる場合に登記の優先順位を確保する為におこなう登記です。

仮登記のままでは第三者に対する対抗力はありませんが、本登記されると仮登記以後に登記されたことは無効になり、仮登記の内容が優先されます。
つまり “所有権移転仮登記” のある不動産を購入し所有権移転登記をしても、後に仮登記の権利者が本登記をおこなうと所有権は仮登記の権利者に移転します。
仮登記や仮差押えなどの保全処分登記は、売買契約前に抹消できることを確認しなければなりません。

抵当権・根抵当権・質権が登記された物件の所有権移転

所有権移転の権利行使を阻害するものとして最も多いのが、抵当権や根抵当権です。
金銭消費貸借契約にもとづく担保権の設定ですが、まれに質権を設定しているケースもあります。

質権は基本的に抵当権と変わりありません。抵当権と異なるのは質権には設定した不動産に対する占有権があることです。
ほとんどの場合は抵当権などの設定原因となっている債務の履行によって登記の抹消ができます。
売買契約前に権利者と協議を行い所有権移転と同時に抵当権等の抹消登記をできるように準備します。

引渡し直前に登記事項証明を確認する重要性

売買においては契約前に行う重要事項説明によって、登記されている事項を確認することができます。
所有権移転の権利行使を阻害する権利の登記の有無を確認しますが、売買契約から引渡しまでにある程度の期間がある場合が多いものです。
売買契約直前には何も無かったのに、引渡しまでの間に仮差押え登記等がされるという事例が無いわけではありません。

司法書士が所有権移転の書類を法務局に持参して、初めてそのような登記がされていることを知る

このようなことを避ける為にも、引渡し当日の直前に登記事項証明書を入手して確認することが大切です。

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