ここでは生産緑地法について解説します。
都市計画において生産緑地地区を指定している市町村は、首都圏・近畿圏・中部圏に多くなっており、内訳は以下の通りです。
- 関東:7,589.0ha(57.55%)
- 北陸:0.1ha(0.00%)
- 中部:1,551.7ha(11.77%)
- 近畿:4,042.6ha(30.65%)
- 九州:4.2ha(0.03%)
*平成28年3月31日現在
》》 市町村別の内訳は国土交通省の都市計画現況調査で確認できます。
生産緑地法による制限は第8条第1項の次の規定です。
生産緑地地区内においては、次に掲げる行為は、市町村長の許可を受けなければ、してはならない。ただし、公共施設等の設置若しくは管理に係る行為、当該生産緑地地区に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。
一 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
二 宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更
三 水面の埋立て又は干拓
取引の対象物件が生産緑地地区内にある場合は、以上について重要事項説明の必要があります。
生産緑地法とは
大都市圏では、都市計画により市街化区域と定められた地域にも、たくさんの農地が広がっていることがあります。
市街化区域なので区域内の土地はほとんど宅地として利用されており、固定資産税は市街化調整区域の農地とは比較できないほど高いものですが、生産緑地に指定されると市街化区域の土地であっても、通常の農地と同じ税額に低減されます。
生産緑地法の施行は昭和49年(1974年)ですが、1992年に「長期営農継続農地制度」の廃止と生産緑地法の改正により、生産緑地地区の指定を受ける農地が増加しました。
2022年にはほとんどの生産緑地が期限を迎え、宅地化されることが予想されていましたが、2017年に生産緑地法が改正され、大量の宅地への放出という“2022年問題”が回避されることになりましたが、その改正の内容を見ていきます。
建築物等の制限が緩和された
重要事項で説明義務のある対象は上に書いたように「第8条第1項」ですが、第2項に次の規定があります。
- 次に掲げる施設で、当該生産緑地において農林漁業を営むために必要となるもの
- 農産物、林産物又は水産物(以下この項において「農産物等」という。)の生産又は集荷の用に供する施設
- 農林漁業の生産資材の貯蔵又は保管の用に供する施設
- 農産物等の処理又は貯蔵に必要な共同利用施設
- 農林漁業に従事する者の休憩施設
- 次に掲げる施設で、当該生産緑地の保全に著しい支障を及ぼすおそれがなく、かつ、当該生産緑地における農林漁業の安定的な継続に資するものとして国土交通省令で定める基準に適合するもの
- 当該生産緑地地区及びその周辺の地域内において生産された農産物等を主たる原材料として使用する製造又は加工の用に供する施設
- ①の農産物等又はこれを主たる原材料として製造され、若しくは加工された物品の販売の用に供する施設
- ①の農産物等を主たる材料とする料理の提供の用に供する施設
- 前二号に掲げるもののほか、政令で定める施設
“前二号に掲げるもののほか、政令で定める施設”が生産緑地法施行令第5条で定める次の施設です。
- 農作業の講習の用に供する施設
- 管理事務所その他の管理施設
具体的には、農産物の直売所や農家レストランといった施設の建築も可能になりました。
面積要件が緩和され300㎡から可能になった
これまでは生産緑地に指定されるには500㎡以上の面積が対象でしたが、改正により300㎡と引き下げられたので、これまで“道連れ解除”と言われる、複数の所有者の農地が生産緑地地区として指定されていた場合、一部所有者の相続等によって生産緑地地区の一部解除が必要になると、残された面積が500㎡を下回り、生産緑地地区全体が解除されてしまうという問題の解消が図れることになりました。
併せて、同一の街区にある複数の農地(ただし1区画が100㎡以上)を一団の農地として指定することができるようになりました。
生産緑地法抜粋ページに関係する法律を読みやすく編集した条文を掲載しました。
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