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「景観法」に関して説明すべき重要事項と法律の背景

景観法は日本国内のすべての地域を対象としています。行政主体は地方自治体とは別に「景観行政団体」として位置づけ、市町村域を超えた総合的な景観形成の施策を実施できる仕組みになっています。重要事項説明では必ず説明すべき法令になります。ここでは、景観法の説明すべきポイントについて解説します。

重要事項説明で説明すべき内容は以下の条文です。

  • 第二章 景観計画及びこれに基づく措置 第二節 行為の規制等-法第十六条第一項及び第二項-届出及び勧告等
  • 第二章 景観計画及びこれに基づく措置 第三節 景観重要建造物等 第一款 景観重要建造物の指定等-第二十二条第一項-指定の通知等
  • 第二章 景観計画及びこれに基づく措置 第三節 景観重要建造物等 第二款 景観重要樹木の指定等-第三十一条第一項-現状変更の規制
  • 第二章 景観計画及びこれに基づく措置 第三節 景観重要建造物等 第三款 管理協定-第四十一条-管理協定の効力
  • 第三章 景観地区等 第一節 景観地区 第二款 建築物の形態意匠の制限-第六十三条第一項-計画の認定
  • 第三章 景観地区等 第一節 景観地区 第三款 工作物等の制限-第七十二条第一項-工作物の形態意匠等の制限
  • 第三章 景観地区等 第一節 景観地区 第三款 工作物等の制限-第七十三条第一項-開発行為等の制限
  • 第三章 景観地区等 第二節 準景観地区-第七十五条第一項及び第二項-準景観地区内における行為の規制
  • 第三章 景観地区等 第三節 地区計画等の区域内における建築物等の形態意匠の制限-第七十六条第一項及び第二項-地区計画等の区域内における建築物等の形態意匠の制限
  • 第四章 景観協定-第八十六条-景観協定の効力景観協定の効力
  • 第四章 景観協定-第八十七条第五項-景観協定の認可の公告のあった後景観協定に加わる手続等
  • 第四章 景観協定-第九十条第四項-一の所有者による景観協定の設定

景観法最終更新: 平成30年5月18日
以上の規定だけの説明では断片的ですので、景観法のしくみを含めて解説していきます。

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景観法の概要

景観法の目的は第1条に我が国の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする。
と定めています。

景観行政団体は3種類

景観行政を行う団体には3種類のタイプがあります。

  1. 政令市、中核市、都道府県
  2. ①以外の市町村で独自に景観行政を行う自治体
  3. ①以外の市町村で都道府県と一体になり景観行政を行う自治体

このような種類があるのは、都道府県と市町村による二重行政を防ぐ目的があります。
取引する物件の所在市町村が、どのタイプかによって景観法による制限の内容が変わるので、必ず確認をします。

都道府県の景観行政団体に属していた市町村が、独自の景観計画の実現のために自ら行政団体に移行するケースは各地で見られます。

景観計画区域とは

景観法では景観行政団体が景観計画を定めることができるとしています。
景観計画の内容としては

  • 景観計画区域
  • 景観計画区域における良好な景観の形成に関する方針
  • 良好な景観の形成のための行為の制限に関する事項
  • 景観重要建造物又は景観重要樹木の指定の方針

これらを必須事項とされています。

景観計画の重要な柱が“景観計画区域”ですが、景観法の趣旨により市町村の全域とする景観行政団体がほとんどです。
景観計画区域は都市の市街地はもちろん、農山漁村の集落や水面を含む土地が該当するとされており、景観法第8条第1項には次のいずれかに該当する土地と定めています。

  1. 現にある良好な景観を保全する必要があると認められる土地の区域
  2. 地域の自然、歴史、文化等からみて、地域の特性にふさわしい良好な景観を形成する必要があると認められる土地の区域
  3. 地域間の交流の拠点となる土地の区域であって、当該交流の促進に資する良好な景観を形成する必要があると認められるもの
  4. 住宅市街地の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業が行われ、又は行われた土地の区域であって、新たに良好な景観を創出する必要があると認められるもの
  5. 地域の土地利用の動向等からみて、不良な景観が形成されるおそれがあると認められる土地の区域

つまり日本の国土すべてが景観計画区域と言っていいでしょう。

景観計画区域の中に、さらに複数の景観計画区域を設定する市町村があります。
また、景観計画区域の中には

  • 景観地区
  • 準景観地区
  • 景観重要建造物
  • 景観重要樹木
  • 景観重要公共施設

などを設定します。

景観計画区域

景観地区とは

景観法の中に“景観地区”という言葉が出てきます。
景観法が成立する前、都市計画の地域地区としてあった“美観地区”が、景観法によって景観地区に名称が変わりました。
美観地区を設定していた市町村は、自動的に景観地区に移行していますが、美観地区を設定していなかった市町村では、景観地区を設定していないケースもあります。

景観地区の代わりに、景観計画区域の中に“景観計画重点区域”といった名称で、制限の厳しい区域を設定している自治体もあります。

重要事項説明で説明する景観法の項目

冒頭に重要事項説明で説明すべき条文を記載しました。順に解説していきます。

景観計画区域での規制
以下の行為をする場合は景観行政団体の長への届け出が必要です。

  • 建築物や工作物の新築、増築、改築若しくは移転、外観を変更する修繕若しくは模様替又は色彩の変更
  • 都市計画法で定める開発行為など
  • 景観計画に関する条例で定める行為
  • 届出した内容の変更

届出が必要となる建築物や工作物は、高さや面積などに基準があり、景観行政団体ごとに定めがあります。

景観重要建造物に対する規制
景観重要建造物と指定された建造物の、増築、改築、除却、外観を変更する修繕や模様替えと色彩の変更は、景観行政団体の長の許可を受けなければなりません。
景観重要樹木に対する規制
景観重要樹木と指定された樹木の伐採や移植は、景観行政団体の長の許可を受けなければなりません。
管理協定の効力
景観重要建造物や景観重要樹木の所有者と、景観行政団体や景観整備機構は、適切な管理の為に「管理協定」を締結することができますが、管理協定が締結されて公告した後に、景観重要建造物や景観重要樹木の所有者になった人にも管理協定の効力が及びます。
景観地区での建築等への規制
景観地区内での建築物の形態意匠には、景観行政団体ごとに規定があります。建築に際しては規定に適合していることの認定が必要です。認定を受けた後の計画の変更も同様に認定が必要です。
景観地区での工作物への規制
景観地区内の工作物について、市町村は条例によって形態意匠や高さの制限があります。また壁面後退区域内の工作物の設置に対しても制限があります。
*「壁面後退区域」とは、壁面の位置に制限がある場合、敷地境界と壁面との間の区域のこと
景観地区内の開発行為
景観地区内で行う開発行為には規制があります。
準景観地区内の規制
準景観地区内にいても、景観地区に準じて建築物や工作物、開発行為に対する制限があります。
地区計画等の区域内での制限
地区整備計画、特定建築物地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、歴史的風致維持向上地区整備計画、沿道地区整備計画、集落地区整備計画で形態意匠の制限を定めている区域を地区計画等の区域と呼び、建築物に規制があります。
景観協定について
景観計画区域内に一団の土地を所有しているか又は借地権のある人は、全員の合意により「景観協定」を締結できます。
景観協定が締結された後に、所有権や借地権を得た場合あるいは、所有権が分割されて2以上の所有者となった場合も、景観協定は効力を持ちます。
景観地区ではなく「景観計画重点区域」等の名称で、一般の景観計画区域より厳しい規制を設けている市町村もありますので、確認して下さい。

以上について対象不動産のある景観行政団体で景観法による制限や規制内容を調査し、重要事項として説明する必要があります。

景観法抜粋ページに関係する法律を読みやすく編集した条文を掲載しました。

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