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買主が宅建業者の場合は重要事項の説明は不要だが買主の取引士の記名は37条書面に必要

平成29年の改正法施行により、買主が宅建業者の場合は重要事項説明を面談のうえ行う必要が無くなりました。
重要事項説明書を交付するだけでよくなりましたが、売買契約書の買主側の取引士の記名は必要ですが令和4年の改正により押印が不要になりました。

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買主が宅建業者だと説明が不要

当たり前だと言えばそれまでですが、宅建業者は不動産のプロです。
重要事項説明書を渡せば、説明などなくても理解できるのは当然です。
あえてプロ相手に説明していたこれまでがおかしかったのですが、不動産業界が成熟してきた証かもしれません。

実務的には、買主がプロの場合は正式な重要事項説明書及び売買契約書を、「案」の段階ですり合わせすることが多く、実質的には十分理解できる時間と機会があるわけで、契約直前に改めて説明をする意味はこれまでもなかったわけです。

29年の改正によってより実状に合った法律になったと言えるでしょう。

買主が宅建業者の場合は重要事項説明書に次の文言を付け加えることが推奨されています。

買主(又は借主)様は宅建業者であるため、買主(又は借主)様には本書を宅地建物取引業法第35条第6項に基づく書面として交付し、説明は行いません。

同時に改正によって変わったところがあるので、追加します。

営業保証金(供託金)からの弁済請求権が無くなる宅建業者

営業保証金は取引の相手方が損害を受けた場合、弁済する為の原資として供託している金員ですが、取引当事者が宅建業者の場合は請求できなくなりました。

その為、重要事項説明書の「供託所等に関する説明」は、次のようにするよう推奨されています。

売主と買主双方が宅建業者の場合の売主欄
供託所等に関する説明の欄を斜線で削除します。
売主と買主双方が宅建業者の場合の媒介業者の欄
供託所等に関する説明の欄を斜線で削除します。
売主が一般で買主が宅建業者の場合の媒介業者の欄
買主が営業保証金を供託している供託所及び住所を記載します。

買主が宅建業者の場合に契約書に買主に所属する取引士が記名押印する理由

全宅連の契約書の様式は、売主が一般か業者かによって別のものを使うようになっていますが、買主が一般か業者かによる区別はありません。
その為、契約書の最後のページの記名押印欄には、買主側の宅地建物取引士の記名押印欄がありません。

宅建業者が買主の場合には、買主の記名押印欄の下に取引士の記名押印欄を作る必要があります。

その理由は、宅建業法37条に定める「書面の交付」では、取引士の記名押印が義務付けられているからです。

法37条書面と契約書は法律上は別のもの、契約書に取引士の記名押印は必要ないが、契約書が法37条書面を兼ねる場合は、取引士の記名押印が必要となる。

すこしややこしいですが、契約書は作って作らなくてもよいものなのですが、宅建業法では37条で定める事項を記載した書面を交付することが義務付けされています。そして交付する義務を負う宅建業者は、売主・買主・代理者・媒介業者(取引態様によって)になるわけです。

次に記載することが決められている37条の内容について整理しておきます。

37条書面に必要な記載事項

まず「37条書面」の交付義務者と誰に交付するのかを明確にしておきましょう。

交付義務者 交付する相手
売買又は交換の契約をした当事者 契約の相手方
売買又は交換契約の代理人 契約の相手方と代理を依頼した者
売買又は交換契約の媒介人 契約の当事者
当事者の氏名及び住所(37条1号)
説明するまでもありませんが、契約する当事者の氏名と住所、法人の場合は名称を記載します。
物件の所在地(37条2号)
宅地の所在や地番、建物の所在・種類・構造など、取引する物件を特定する為の表示を記載します。
既存建物の構造耐力上主要な部分の確認事項(37条2号の2)
既存住宅状況調査を1年以内に行ったものの有無を記載します。
代金などの金額と支払時期や方法(37条3号)
代金又は交換差金の金額と「手付金」「中間金」「残代金」の金額と支払時期を記載します。
物件の引渡し時期(37条4号)
物件の所有権を移転し建物の鍵を渡す期日を記載します。通常は残代金支払期日と一致します。
移転登記の申請の時期(37条5号)
37条4号(物件の引渡し時期)と同じで、所有権の移転登記を申請する期日になります。
代金及び交換差金以外の金銭の授受の金額と時期及び目的(37条6号)
代金及び交換差金以外の金銭には、手付金、仲介手数料、印紙代、公租公課清算金、収益金などですが、一般的には売主と買主との間で授受する金銭について記載します。該当するの公租公課清算金や収益金の清算金です。
またこの項目は“任意的記載事項”なので、金額・時期が決まっていれば記載しますが、契約の時には引渡しの正確な日は決まっていないのが一般的です。その為、金額や時期については記載せず、日割り清算する起算日だけを記載することになります。
契約の解除に関する定め(37条7号)
これも任意的記載事項ですが、一般的に次のような契約解除の形式があります。

  1. 手付解除
  2. 引渡前の滅失・毀損の場合の解除
  3. 反社会的勢力の排除条項に基づく解除
  4. 融資利用の特約による解除
  5. 瑕疵担保責任による解除

このうち、№2・№3の解除解除についてはほとんどの場合必ず記載することが多いと思います。

損害賠償額の予定又は違約金の定め(37条8号)
これも任意的記載事項ですが、上の「契約の解除」に付随する事項です。
代金又は交換差金についての金銭の貸借のあつせんに関する定め(37条9号)
これも任意的記載事項です。分譲マンション・分譲住宅などの場合、売主が提携している住宅ローンを利用する場合などに内容を記載します。
天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め(37条10号)
この項目は“危険負担”に関する取決めです。民法では危険負担については債務者主義をとっていますが、不動産などの特定物は債権者主義になります。しかしそれでは不可抗力によって目的物に損害が生じた場合でも、約定通りの売買代金を支払う義務が生じ、一般常識からは納得ができません。そこで、特約によって債務者主義に変えている契約様式がほとんどです。
瑕疵担保責任と、瑕疵担保責任の定め履行に関する保証保険契約の定め(37条11号)
瑕疵担保責任に関する定めがあれば記載します。また瑕疵担保責任に関する保証保険契約についても講ずる場合はその内容を記載します。ここも任意的記載事項です。
公租公課に関する定め(37条12号)
固定資産税・都市計画税の負担方法について記載します。公租公課はその年の1月1日の時点で所有している人に納付義務があります。その年の途中で所有権が移転されるので、引渡し日から12月31日までの日割り計算分を買主が負担するのが一般的ですが、納付書は売主の元にありますし、地方自治体も納税義務者を途中で変更することはできません。そこで、買主負担分を残代金の支払いに合わせて売主に支払うことで租税公課の清算を行います。

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