シックハウス症候群が大きな問題となり、建築基準法の改正によりシックハウス対策が始まったのが2003年です。すでに14年が経過し建築物で使用される建材は、ほぼ対策済と言っていいのですが、建材以外が原因となるシックハウス症候群があります。
建材以外のシックハウス症候群の思わぬ原因が“灯油漏れ”です。
東北や北海道では、暖房は灯油を燃料とする機器を使用することが多く、室内の灯油配管や給油コックなどからの灯油漏れによるシックハウス症候群が発生する事例があります。
室内空気を汚染する原因物質を探る
- 燃焼型暖房器具から発生する一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物
- 接着剤・塗料などから発生する有機溶剤
- 防腐剤から発生する揮発性有機化合物
- カビ・微生物
以上のような物質が室内の空気中にある程度の濃度で含まれると、人体に様々な影響を与えます。
シックハウス症候群の対策として建築基準法が規制している対象は、建材などに使用されている「接着剤・塗料などから発生する有機溶剤」ですが、造り付け以外の家具に使われる材料は対象外になっています。
その為、建材以外から発生するシックハウス症候群の原因物質も多く、これらの物質を取除くには換気が最も有効なことから、24時間換気が義務付けされています。
中古マンションを購入し全面的にリフォーム工事を行い、引越しをしようと思った頃、工事が完了した後も換気を連続して行っているのに、室内に入ると異臭や刺激臭がします。
こんな相談事例がありました。
リフォーム工事などによる室内環境汚染は3ヶ月
建材に使用される接着剤や塗料などの影響は、工事完了後3ヵ月程度でかなり減少します。
引越し前ですから、建材以外の家具やカーテン・敷物などから発生する汚染物質の可能性は無く、室内の刺激臭は別の原因が考えられます。
建材以外に汚染物質を発生させる物質というと・・・灯油が考えられます。
暖房・給湯用に灯油炊きボイラーやFFストーブが設置されたマンションは寒冷地ではよく見られます。
次に紹介する資料は、北海道立衛生研究所が発表した研究報告「灯油漏れ室内空気汚染事例におけるテトラデカンを含むアルカン類濃度」です。
鉄筋コンクリート造のマンションにおいて発生した、灯油漏れが原因となった室内環境汚染の状況を分析した結果がまとめられていますが、灯油から発生した物質以外に、灯油除去に使用した中和剤から発生した物質も、汚染物質の原因となっていたことは驚きです。
灯油の配管や器具からの灯油漏れは気付かないだけで意外と多いものです。
漏れる量もかなり微量であるため、なかなか気づかずに長い期間を経て、かなり大量な灯油が内装下地である石膏ボードに染みこみ、室内の温度が上がるにつれ揮発し、強い臭いを発するという例が実際にあります。
漏れる原因は灯油配管の劣化ですが、配管本体よりも器具との接続に使用するゴム管の劣化が多く、灯油コックが直接見える場合は気が付くこともありますが、灯油コックがボックスに格納されている場合はまったく気が付きません。
灯油の配管経路によっては漏れた灯油が下階に伝わることもあり、下階に被害を与えた場合には損害賠償責任を負うことにもなります。
シックハウスのようだけど、原因がはっきりしない時は“灯油漏れ”を疑ってみて下さい。
灯油供給業者や管理会社に依頼して、灯油配管の圧力試験をやってみるとすぐ分かります。
漏れがあるようだと、最悪の場合は内装を下地ボードを含めてすべて剥がして、徹底的に乾燥させる必要があります。
また中和剤の使用も避けた方がよさそうです。
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