建築でもこのようなことがあり、法令違反をしている認識がないのに、違法な建物で生活していたり利用したりしている場合があります。
ここでは、法律に違反している“違法建築”と“既存不適格”について解説します。
住宅や建築物の基準を定めた法律を“建築基準法”といいます。
関連する法律に“都市計画法”があり、この二つの法律が建築する場合に遵守しなければならない大きな法令になっています。
これらの法律や基準に合致していない建築物を“違法建築”とか“違反建築”と言いますが、法律に違反していなかった建物がいつのまにか“基準法違反”になってしまう既存不適格建築物と言われる建物があります。
建物が既存不適格になってしまう理由
建物を建てる場合には自治体や指定確認検査機関に、これから建てようしている建物の概要書や設計図書などを提出して建築確認という手続きをすることが定められています。
確認申請を受理した自治体や指定確認検査機関は、設計図書などの審査を行い、一定期間内に建築主に“確認”をした結果を通知することになっています。通知は“確認済証”という書類を交付することによって行います。
確認がされてから工事に着手し、工事が完了した時点で“完了検査”を受けて初めて建物を使用することができます。
さて、こうして法律上の手続きをきちんと行った建物が、後に違法建築になってしまう理由を見ていきます。
違法建築とはいっても、法律に違反することを承知の上でなったものではなく、いろんな事情によってなってしまうもので、既存不適格は厳密に言うと違法建築ではありませんので安心して下さい。
建蔽率や容積率が基準をオーバーして既存不適格に
- 都市計画で決めている「用途地域」が変更になり、許容される最大の建築面積や延床面積が、建築した時から変更になり建蔽率や容積率がオーバーに
- 道路の拡幅など自治体による敷地の買収が行われ、敷地面積が減少した
- 法務局が職権で行った地図作成により、敷地が実測されて敷地面積が減少した
上のようなケースが典型的な事例ですが、似たように建蔽率・容積率がオーバーになる事例の中には“違法建築”になるケースもあります。それが次のようなケースです。
用途地域が変更になり建ててはいけない建物になった既存不適格
都市計画区域内では用途地域を細かく区分して、建ててもよい建物や、建ててはいけない建物を指定しています。
用途地域が変更になると、これまで建ててもよかった建物が建てられなくなります。
- 店舗が建っていた地域が第一種低層住居地域になった
- ホテルが建っていた工業団地が工業専用地域になった
このように用地地域が変更になると、建ててはいけない建物に該当してしまい既存不適格になるケースがあります。
既存不適格建築物になるとどうしたらよいのか
既存不適格は主に行政上の手続きなどにより生まれます。建物を建てた建築主や所有者になんの責任もありません。
建築基準法第三条2項(摘要の除外)には次のように書かれています。
この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。
つまり『法令の改正前に存した建築物や敷地は、規定に適合しなくなったとしても、新しい規定は適用しない』ので、適法建築物になります。
身近にたくさんある既存不適格な住宅
一般の住宅地に建つ戸建住宅はこのような“既存不適格”とは無縁と思われるかもしれませんが、実は既存不適格建築物は意外と身近にあります。
平成15年7月以後に建った住宅以外は、実は既存不適格建築物になっている可能性が高いのです。
平成15年7月1日着工分から改正された建築基準法の規定があります。
台所、浴室、洗面室、トイレ、以外にすべての居室に24時間換気が義務付けされましたが、基準法で定めている換気性能を持っていない住宅はすべて、基準法に違反しており既存不適格建築物になります。
構造性能的には平成12年6月を境にして、大きな基準の違いがあります。これも既存不適格の事例です。
「平成12年5月以前の新耐震基準木造住宅の危険性を検証する」も参考になります。
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