プレハブ住宅という言葉から受けるイメージは“安っぽい”とか“仮設”と感じる人が多いと思いますが、積水ハウス、ミサワホーム、積水ハイム、ダイワハウスなどといった大手ハウスメーカーの住宅は、プレハブ住宅に分類される“工業化住宅”です。
これらの工業化住宅はプレハブ住宅というネーミングのイメージとは異なり、在来工法に比べて品質が確保されやすいという特性を持っていることにもっと注目をしなければならないと最近思っています。
初歩的なミスが多くなっている住宅の現場作業
建設業界では人手不足、人材不足、職人不足が問題となっています。
この傾向は住宅建設においても同様で、人手不足が原因と思われるような単純な施工ミスが多くなっています。
相談サイトに寄せられる相談内容を見ていると「こんな単純なミスを平気でやっているの」と感じる事例が増えているように思います。
人の手で行う作業に“ミス”はつきもの、100パーセント防ぐことはできないのですが、
施主の立場から言えば「施工ミスは絶対あってはならないこと」です。
ミスったら謝ればよい!という風潮も業界にあるようで、出来るだけミスを防ごうとする工夫や努力をしてほしいなあ~という思いで、プレハブ住宅といわれる工業化住宅と在来工法住宅の違いなど、施工ミスを防ぐという観点から感じていることを少し披露したいと思います。
自動車産業が目標となっていたプレハブ住宅
プレハブ住宅=工業化住宅(“プレハブ住宅”はやはり安っぽい響きがあるので、ここからは“工業化住宅”と呼称します)が生まれた昭和30年代後半~昭和40年代前半、日本は既に高度成長期に入っており、製造業は鉄鋼、化学、機械、など基幹産業となり大いに躍進していた頃です。
自動車産業も弱小メーカー乱立の時代から整理統合され、トヨタ、本田、日産、スバル、三菱、スズキと主要メーカーが育ち世界市場に挑戦する状態となっていました。
住宅不足が顕著となっていた戦後、短期間で住宅を建設することができる工場生産住宅の開発が行われるように、大和ハウスが商品化した“ミゼットハウス”を皮切りに、積水ハウス、ミサワホームと、鉄骨系と木質系の工業化住宅の生産・販売がスタートしました。
開発を行う工業化住宅の開発部門が目差していた住宅は「自動車の生産工程」から生まれるようなイメージでした。
開発部門の幹部の中には、自動車産業出身者がいたことからも「自動車がお手本」であったことが伺えます。
工場で作るから検査が徹底できる
住宅を造るのは現場なので“建設業”ですが、工場で造る住宅は“製造業”と言えます。
建設業と製造業との大きな違いは、工程管理がしっかりできることです。
製造工程の中では検査は頻繁に行われるので、部品や部材の不具合や組立作業の不備など、後に品質に係わるようなミスの発生は、製造工程の中で防ぐことが可能になっています。
対して現場で作業を行う“建設業”では、頻繁に検査を行うことは難しく、工場並みの検査を行おうとすると、検査員が現場に常駐しなければなりません。
住宅を造っていく体制の中に、検査員を常駐させることはコストアップの大きな要因であり、非現実的なことです。
建設業では、工程に基づいたサンプリング検査が常識ですが、工場加工組立では出荷前に全数検査が可能です。
現場ではできない検査が工場ならできる
この違いは住宅を造る上で非常に大きな違いと言えます。
ミスった部材は簡単に交換できる
人間のすることにミスはつきものです。ミスった時にはその部分をやり直したり、部材や部品を交換することも必要になるかも知れません。
現場で起こるミスの場合、やり直しや交換が簡単に出来ないとか、他の工程に影響を与える為にミスをそのままにして先に進んでしまうということもあるかも知れません。
工場でのミスは比較的簡単にやり直しや交換が可能だと思います。
AIやロボットなどIoTのテクノロジーが工場にどんどん導入されるようになると、工場内で起こるミスはもっと減らすことができるでしょう。
逆に、現場でのロボットの導入は限られた範囲になり、IoTテクノロジーがもっと発展したとしても、住宅現場での導入効果は限定的です。
工場での作業量を極力増やし現場作業を減らす
施工ミスを無くし住宅の品質を確保する方法として有効なのは、工場加工率を上げることです。
在来工法でも軸組のプレカットを始めとして、工場加工を増やす試みは行われてきました。
使用する部材や資材についても、工場生産品が多く使われるようになっていますが、壁や床のパネル化など在来工法に導入できる“工業化”は、まだまだ導入できる余地があり、在来工法の工場加工率を上げる試みは今後ますます必要になってきます。
現場で行う作業を出来るだけ工場で行うように転換する。
地場の工務店などが大手のハウスメーカーに対抗する為にも必要なことだと思います。
人的クレームの多い住宅産業
「住宅産業はクレーム産業」とかつて言われました。
現在も状況は変わっていないと思います。
- 契約前の約束が着工すると守られていない
- 打合せしたことが現場に反映されていない
- やり直しやり直しの連続で部材が中古品のようになった
- 追加工事代金として過大な請求をされた
- 大幅に工期が遅れて仮住まいの家賃が嵩んだ
などなど例を上げると限りなく住宅工事に係わるクレームは多いものです。
そのうちほとんどは“人的クレーム”で、営業担当者や工事担当者の資質や、報連相など基本行動の欠如だとか、技術上のこととはまったく無縁のことが原因となるクレームが目立ちます。
工業化が進み高い品質の住宅を提供できるようになっても、こういった人的クレームは残ると思いますが、住宅の質が下がっているようなことが無ければ、我慢もできるものです。
住宅産業の健全な発展のためにも、工業化を進めてほしいものです。
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