1年が経過した平成30年6月~7月に行われた調査では、有効回答数の96.2%の管理組合が「民泊の全面禁止」を決議しました。
しかし回答があったのは1.2%であり、回答を寄せていない大多数の管理組合では、民泊に対する検討が行われていないのか不安に思います。
この記事は2017.08.31に投稿したものですが、その後の状況が分かってきたので、ページ末に調査結果に基づく民泊に関する管理組合の状況を追記しました。
国土交通省が「マンション管理標準規約」の改正を行い、“民泊”に関して認めるか認めないかを明文化した管理規約のひな型を公表しました。これにより、平成28年11月に公表した国家戦略特区における民泊事業と、平成29年6月に成立した「住宅宿泊事業法」による民泊事業に対し、マンション管理組合が民泊事業の認否をどうするかについて、議論し規約改正に向けてのスタートが切られたことになります。
民泊事業を認める区分所有者と認めない区分所有者
理想的な住環境を求めて手に入れたマイホーム。分譲パンフレットには“民泊用にも使えます”などのキャッチフレーズのついたマンションはありません。
特別な物件以外は“民泊利用”を前提としたマンションが分譲されることはありません。
おそらく分譲デベロッパーが分譲時に示す「管理規約(案)」には、民泊に関する記述はないはずです。
ところが「住宅宿泊事業法」の成立によって、分譲マンションの所有者たちは否応なく、民泊について決断をしなければならなくなったのです。
管理組合の総会を開き、区分所有者たちの意見を聞くと、当然ですが3つの意見に分かれます。
- 民泊利用を禁止する
- 民泊利用を認める
- どうしてよいか分からない
そして総会の決議は3つのパターンに分かれます。
- 民泊利用を禁止する
- 民泊利用を認める
- 保留にする
管理組合はこの三種類の対応をすることになるのですが、もうひとつ予想される管理組合の対応があります。
それは、民泊についての議論をまったくしないということです。
おそらく日本中のマンションの中で最も多いのが
民泊に関する議論はしない
次に多いのが
議論はしたけど結論が出ずに保留
ということになるのではと思います。
民泊についての諾否が決められない理由
住宅宿泊事業法が生まれた背景には二つの側面があります。
一つは「旅館業法」に抵触するような形で、住宅が宿泊業に利用されている状況が生まれてきた中で、一定のルールを設けることによって、住環境の保全を図りながら“民泊”を合法的なものにしようとするものです。
もう一つの側面が、外国人旅行者の増加に伴い、絶対的な不足が指摘されている宿泊設備の補完的役割を、事業者とも言えない個人に担ってもらうという政策です。
国は外国人旅行者による経済効果にかなり期待しています。
国ばかりでなく国内の数多くの都市が、外国人旅行者が落としていくマネーによって、少しでも潤いが得られるようにと、おもてなしの試行錯誤を行っています。
観光産業のインフラともいえる、交通機関と宿泊設備。不足しているものを補う為には手段を選ばず、として生まれたのが「住宅宿泊事業法」の一面です。
住宅宿泊事業法は、空き家になっている住宅や使っていない部屋がある住宅を、足りない宿泊設備を補う為の窮余の策として生まれたもので、決してマンション所有者の為に役立つ法律として生まれたものではありません。
だから、マンションの所有者にとっては、快適に生活できている現状では“民泊”などを自らやろうとは思わないものです。
むしろ、隣や上下の住戸が民泊に利用される状態は望まないものです。
そのように思う人がたくさんいるマンションであっても、管理規約に民泊禁止と明記するかというと、簡単にはそのようにはならないように思います。
口には出さないけど「将来的な利活用」を漠然と考えている人もいるでしょう。現在は考えてないが将来のことは分かりません。自分だけの問題であれば、後になって考えが変わることもありますが、区分所有というマンションの性格上、管理規約の改正は簡単に出来るものではありません。
あえて禁止事項を増やすということに、抵抗感を覚える人もいると思います。
そこで出てくる結論が、日本人が得意とする“先送り”でしょうか。
民泊に関する管理組合としての意思決定をしなければならない局面は、既に民泊が行われているマンションにおいては絶対に行わなければならないものです。
次に意思決定が必要なケースというと、民泊の需要が高い地域に建つマンションで、区分所有者の中に民泊を容認すべきといった意見や動きがある物件に限られるように思います。
『ウチのマンションは民泊とは無縁だな~』というようなマンションでは、多分議論さえ行われないのではないでしょうか。
そんなことを考えてくると、『笛吹けど踊らず』という結果に終わりそうな気がしますが、どうでしょう?
管理規約の変更等、協議が行われていない管理組合が多数あるのでは?
公益財団法人マンション管理センターの調査では、105の管理組合からの回答があったわけですが、登録されている管理組合は約8,600組合あるといいます。
105組合からの回答結果は
- 民泊全面禁止が 101
- 一部民泊許容が 0
- 全面的に許容が 0
- 何も定めていないが 3
- その他が 1
このような結果でしたが、ほとんどの組合からの回答が無いのは、調査方法がWeb上での調査のみであったこと、そして調査ページのURLの告知方法がチラシの折り込みという、確実な告知方法でなかったことが原因かと思いますが、調査アンケートを承知していたにもかかわらず回答を寄せなかった組合があったとすれば、「何も定めていない」に該当する「組合での協議がされなかった」ケースが、少なからずあるのではないかと予測しています。
管理規約に「民泊禁止」が明文化されていない場合は、組合員が自由に民泊登録が可能になるわけで、そのことによってマンション内での近隣トラブルが発生することも考えられ、全国の管理組合の民泊に関わる協議について、正確な情報収集が必要ではないかとの危惧が、杞憂であればいいのですが。
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