不動産投資における物件選択の指標として「キャップレート」から物件の善し悪しを判断する方法があります。
キャップレートとは「投資利回り」のひとつですが、表面利回りや実質利回りとどのような違いがあるのか、物件選択の時点でどのように活用するのか解説します。
キャップレートとは
不動産投資をする上での物件選択では「利回り」を重視します。不動産市場にはたくさんの物件がありますが、ほとんどは「表面利回り」を記載しています。
表面利回りは「満室時年収÷物件価格」により算出するのですが、実際に手元に残る利益の利回りではありません。実際の利益の利回りは「(実際の収入-必要経費)÷(物件価格+諸経費)」 で計算し、これを実質利回りと言います。
物件購入を判断するには実質利回りがどのようになるかが重要ですが、仮に実質利回りが4.0%になる物件を想定した場合、4%が最適な利回りなのか、もっと高くなければならないのか、それとももっと低くてもよいのか判断が難しいと言えるでしょう。
なぜなら、実質利回り4%を評価する基準がないからです。
そこで物件価格の妥当性を判断する基準となるのが、この記事のテーマである「キャップレート」です。
キャップレートは次の式で計算します。
キャップレートは「期待利回り」といい、不動産投資に関しては「一般財団法人 日本不動産研究所」が行う「不動産投資家調査」により、全国主要都市のキャップレートを公開しています。
最新のデータでは2023年10月の結果が公開されており、ワンルームタイプの賃貸物件のキャップレートは以下のとおりです。
エリア | 東京 城南 | 札幌 | 仙台 | 横浜 | 名古屋 | 京都 | 大阪 | 神戸 | 広島 | 福岡 |
期待利回り(%) | 3.8 | 5.0 | 5.1 | 4.5 | 4.6 | 4.8 | 4.4 | 4.8 | 5.2 | 4.7 |
この結果から東京城南の物件であれば、キャップレート3.8%が妥当な水準であり、この水準に近い物件あるいは価格であれば、購入する判断がしやすいと言えるのです。
キャップレートから最適価格を求める
上記のように物件価格の妥当性はキャップレートから判断するのがひとつの方法です。
キャップレートから最適な物件価格を求めるには、年間収益をできるだけ正確に計算する必要があります。
10室あるアパートを想定してシミュレーションをやってみましょう。
月家賃:10万円
入居率:90 %
必要経費率:15 %
年間収益:918万円
上の設定は、10室あるアパートで月家賃が10万円の場合、入居率を90%と設定し必要経費を15%と仮定して年間収益を求めたものです。
年間収益は918万円と想定できるため、例えばキャップレートが4.0%の地域であれば次の式により最適物件価格を求めることができます。
918万円÷0.04=22,950万円
物件価格2億2,950万円の表面利回りは次の式になります。
1,200万円÷22,950万円=5.2%
この結果によりキャップレートの違いにより、最適価格がどのように変化するのか、さらに最適価格に対応する表面利回りを一覧にしたものが以下です。
キャップレート (%) |
物件価格 (万円) |
表面利回り (%) |
3.0 | 30,600 | 3.9 |
3.5 | 26,229 | 4.6 |
4.0 | 22,950 | 5.2 |
4.5 | 20,400 | 5.9 |
5.0 | 18,360 | 6.5 |
5.5 | 16,691 | 7.2 |
6.0 | 15,300 | 7.8 |
6.5 | 14,123 | 8.5 |
7.0 | 13,114 | 9.2 |
7.5 | 12,240 | 9.8 |
8.0 | 11,475 | 10.5 |
仮に同一の物件がキャップレート6.0%の地域にある場合、物件価格が1億5,300万円で表面利回りが7.8%以上あれば購入する候補として有力であると言えます。
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