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家賃滞納トラブル防止と契約解除の対処方法

入居者からの家賃が入金されていない、先月分もまだ未入金であり2ヶ月分の滞納になってしまう、そんな時どのように対応すべきか、賃貸管理の中でも最も大事な家賃管理について、民事訴訟の手続きや事例を含めて紹介します。

賃貸借契約書には「賃料又は共益費の支払いを2ヶ月以上怠ったとき、相当の期間を定めて当該義務の履行を催告したにもかかわらず、その期間内に当該義務が履行されないときは本契約を解除することができる」と記載されています。
さて、契約書どおりに契約を解除できるのでしょうか、そして滞納家賃はどうなるのでしょうか。

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賃貸借契約における契約解除の条項

一般的に賃貸借契約には“契約解除”に関する条項があり、契約解除できる場合の条件を定めています。

  • 賃料の支払いを○ヶ月怠ったとき
  • 無断で第三者に転貸したとき
  • 目的と異なる使用をしたとき
  • 禁止事項に違反したとき

このようなことに該当すると契約解除できるとされていますが、催告なしに解除することはできず、ある程度の期間は入居者が債務履行することを待たなければなりません。この場合、無催告解除特約を設けていたとしても、訴訟上では無催告解除が認められることはほとんどなく、ある程度の期間を設けて催告する必要があります。
*例えば、「2週間以内に支払わなければ契約を解除する」などのように期限を設けて催告します。

第1のポイントは-家賃の滞納があっても即時契約解除はできない

では次に家賃滞納が2ヶ月に及んだ時の対処方法について紹介します。

家賃滞納が2ヶ月になったときの対応方法

1ヶ月分の家賃の滞納については「うっかり!」ということもあります。当月分の家賃は前月末までに支払うのが一般的ですが、当月になっても支払われていないときには「お忘れですか?」といった感じのお知らせをするほうが望ましいと思います。
大家さんによっては「催促がましくて」と遠慮する方もいますが、約束通りに支払いをすることによって信頼関係が保てるわけですから、当月10日過ぎても支払っていない場合は、遠慮なく催促するほうがお互いの為です。

お知らせすることをしないでいて2ヶ月分の滞納になった時は、危険信号が灯りますので遠慮なく催促をします。
「すみません2、3日中には」などの返事がある場合は、少し待ってもいいと思います。
2、3日待っても支払いが無い場合は、まず連帯保証人に連絡をします。

保証人に連絡をすると「なぜ、保証人に連絡をした?」などとクレームを言ってくる入居者が時々います。
滞納していることを保証人に連絡するのは当然ということを、毅然とした態度で言うべきです。また、遠慮して保証人に何も連絡しない大家さんが時々いますが、滞納額が増えていくと保証人の損害が増えることになるので、2ヶ月滞納の状態が解消しない場合は必ず保証人に連絡します。

家賃滞納が3ヶ月になったときの対応方法

入居者本人に催促の電話などをし、保証人にも連絡をしているのに家賃が支払われず、3ヶ月の滞納状態になると法的な手続きを視野に対応する段階です。

賃貸借契約書に書かれてあるとおり、相当の期間を定めて当該義務の履行を催告します。
つまり、滞納家賃を○日以内に支払いなさい、支払いが無い場合は契約を解除しますという“意思表示”を入居者にします。それと同時に連帯保証人にも滞納家賃の支払いを請求します。

方法は電話でもいいのですが、後に民事訴訟を起こすことを考えると、文書で通知するのが原則です。
相手に確実に催告の文書が届くようにしなければなりませんので、“配達証明付きの内容証明郵便”にします。

内容証明郵便は一般書留郵便物なので、留守宅に届けることはありません。本人又は同居人などが受取るのですが、相手によっては内容証明郵便が来ると“督促状”だと察知して受取を拒否する人もいます。
受取りを拒否されると“当該義務の履行を催告”した事実が証拠して残らないので、民事訴訟では不利になることがあります。

内容証明郵便と同一の内容を書いた文書を、“特定記録”で送ると、相手の郵便受けには届いたという証明になるので、“当該義務の履行を催告”した事実の証明を補完できるので、同時に特定記録でも送付しておきます。

こうすることで催告したにもかかわらず支払う意思が無く、信頼関係が崩壊したことにより契約を解除するという主張が、裁判になった場合に認められる可能性が高くなります。

民事訴訟などを起こす手順

3ヶ月の滞納後、催告を行っても支払う意思が認められない場合、法的解決の準備に入ります。

法的解決には種類があります。

  1. 地方裁判所での通常訴訟
  2. 簡易裁判所での少額訴訟
  3. 簡易裁判所での民事調停
  4. 簡易裁判所での支払督促
  5. 簡易裁判所での訴え提起前の和解

民事訴訟以外は簡易裁判所での手続きになります。

地方裁判所での通常訴訟
滞納賃料の支払い請求と同時に賃貸借契約の解除と明渡しの請求をするのが一般的です。
時間の取れる大家さんであれば弁護士に依頼せず、自分で訴訟手続きをすることができます。
「訴状」を裁判所に提出するのですが、裁判所|民事訴訟・少額訴訟で使う書式にひな型があるので、難しくはありませんが、修正などで時間がかかるのも困る場合は、司法書士に依頼すると2万円程度で作成してもらえます。
裁判所に納める手数料などは、延滞金額と賃料を延滞している不動産の価格によって異なります。
準備する証拠書類は次のようなものです。

  • 賃貸借契約書
  • 賃料振込口座の預金通帳
  • 発送した督促状の記録(配達証明や特定記録や内容証明など)
  • 延滞賃料の支払いに関する覚書や誓約書など
簡易裁判所での少額訴訟
60万円以下の支払いを求める訴訟です。明渡し請求はできないので、60万円以下の延滞賃料の支払いだけを請求する場合に限って使える手続きです。
簡易裁判所での民事調停
延滞賃料を分割で支払えそうな場合、訴訟ほど厳格ではありませんが、任意の約束よりは法的な効力のある“民事調停”は、費用負担が軽く書類も簡単です。
ただし、相手方が調停期日に出席しないこともあり、その場合は調停での解決はできません。
簡易裁判所での支払督促
延滞賃料の支払いを求めて債務名義を取得する為に行う手続きです。手続きは簡単ですが相手が異議を申立てすると“通常訴訟”に移行します。
異議の申立てが無く債務名義を取得できると、強制執行が可能になります。また、通常訴訟に移行した場合は、延滞賃料の請求に加えて建物の明け渡しも請求することができます。
簡易裁判所での訴え提起前の和解(即時和解)
延滞賃料の支払いに関して和解できる可能性がある場合、当事者間での任意の和解と違い法的効果のあるのが“訴え提起前の和解”です。
訴訟を起こす前に和解申立てをします。民事調停と同様に期日に相手方が出席しないとできませんが、和解が成立すると判決と同じ効果のある「和解調書」が作成されます。

裁判所|民事事件

事例からみる延滞トラブル解決法

賃料の滞納は大家さんにとって最も頭の痛い問題です。
管理会社に管理を委託している大家さんは多いと思いますが、委託管理であっても延滞トラブルが起きると、大家さん自身が解決しなければなりません。

訴訟や調停など裁判所を利用する解決には、本人の出席が必要です。
管理会社は代理人となることはできないので、大家さんが本人が裁判所に行けない場合は弁護士に依頼しなければなりません。

数十万円ほどの延滞賃料の回収に弁護士費用をかけて、最終的には賃料の回収は出来ず、強制執行による明渡しでは費用ばかりが掛かってしまいます。

延滞トラブルがどのようにおきてしまうのか、事例から浮かんでくる事情が見えてきます。

延滞がはじまっても督促できない大家さん

管理会社に委託している場合でも、家賃の集金は大家さん自ら行うというケースがあります。
入居・退去立会や修繕メンテナンスのみを管理会社が行っている場合、家賃の入金状況は管理会社ではチェックできません。

6ヶ月とか1年間の家賃が滞納されてから、初めて管理会社に相談に来る大家さんがいます。
なぜ放っておいたのかを尋ねると、「催促するのか嫌だった」と答える大家さんが多いものです。

昔は「大家と言えば親も同然店子と言えば子も同然」ということわざのようなものがありましたが、現代は借金を抱えて賃貸事業を行う大家さんが多く、そのような悠長なことは言ってられないのですが、元々農家で土地がたくさんあり、複数のアパートを所有している大家さんに多い傾向があります。

半年とか1年とかの延滞があり多額の未払い賃料が溜まっている状態になってからでは、入居者本人も支払いの目途が立てられないし、請求を受ける保証人にとっても重い負担になります。
保証人の中には「こんなに放っておいてから請求されても・・・」と、保証人としての支払いを拒絶してさらにトラブルが悪化する場合もあります。

滞納が2ヶ月になった時には必ず督促をするように心がけことが延滞トラブルを防ぐ近道です。

賃料弁済の公正証書作成で解決を図る

訴訟や調停あるいは即時和解をするにしても、入居者が裁判所に出向く必要があります。
家賃の支払いをできない入居者が代理人弁護士を依頼することは考えられません。

入居者が裁判所に行くことが出来ないことがトラブル解決の障害になることもあります。
そのような場合に利用できる方法が「公正証書」作成です。

事前に延滞している賃料の支払い計画を入居者と協議します。
支払い方法が合意出来たら公正証書を作成します。公正証書には「約定どおりの支払いができない場合は強制執行」する旨の文言も必ず加えておきます。
公正証書は入居者が指定する代理人の出席で作成できるので、保証人とか家族の者でも可能なので、裁判所に行くことが出来ないという障害も無く、トラブル解決の道を作ることができます。

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