住宅ローンの利用の一つとして、所得合算によって夫婦が連帯債務者となる形式があります。
この場合は取得する住宅は共有名義とし、持分割合を決めるのですが、一般的には夫婦それぞれの年間所得の比率によって持分を決めることが多いわけですが、年間所得比率と異なる持分割合にした場合、どのようなメリット、デメリットがあるのかまとめました。
持ち分比率は年間所得比率に合わせるのが原則
共有持ち分の決め方で最もオーソドックスな決め方は、年間所得の比率によって決める方法です。
ご主人が年間450万円、奥さんが200万円なら、2.25対1.0ですがもう少し分かりやすくすると、ご主人が約7割、奥さんが約3割という比率です。
この比率以外の比率で共有持ち分を設定すると、多くなった分は“贈与”と見なされることがあり、注意が必要です。
国税庁長官から各国税局長あてに通達された「共かせぎ夫婦の間における住宅資金等の贈与の取扱について(昭和34年6月16日 直資58)」には以下のように記載されています。
個人が住宅金融公庫等から個人住宅建設資金または敷地購入資金を借り入れて住宅または敷地を取得した場合において、当該借入資金の返済がその借入者以外の者の負担によってされているときは、その負担部分は借入者に対する贈与とみるべきであるが、当該借入者および返済者がいわゆる共かせぎの夫婦であり、かつ、借入資金の返済が事実上当該共かせぎの夫婦の収入によって共同でされていると認められるものについては、その所得あん分で負担するものとして取り扱われたい。
なお、その借入者が贈与を受けたものとして取り扱う金額は、歴年ごとにその返済があった部分の金額を基として計算することにされたい。
仮に共有持ち分を5:5にしていた場合に、贈与とみなされる金額や住宅取得控除にどのような影響が出るのか見ていきます。
持分割合と住宅ローンの返済比率に違いがあり贈与となるケース
ケース1として以下のような条件を仮定して計算します。
- 取得した住宅価格は4,000万円
- 頭金の400万円はご主人の預金から
- 住宅ローンは3,600万円
1/2ずつの持分ですから、ご主人2,000万円、奥さん2,000万円の資産を取得したことになります。
資産を取得する為の資金の内訳は
奥さん=住宅ローン2,000万円
となるのですが、国税庁の「住宅資金等の贈与の取扱」では
住宅ローンの負担あん分は
奥さん=1,080万円
となります。
となり920万円が贈与に相当するわけですが、丸々920万円が贈与ではなく、920万円に相当する分の返済額が贈与対象になります。
920万円は3,600万円の25.55%ですので、毎年の返済額の25.55%がご主人から奥さんへの贈与額であり、この金額が110万円以下であれば贈与税は非課税になるわけです。
住宅取得控除はどうなる
上のケース1の場合に住宅取得控除はどうなるかを見ていきます。
ご主人が負担する住宅ローンの返済元金は2,520万円ですが、うち920万円は奥さんの為に返済する元金です。
ご主人が自分の為に返済する住宅ローンは1,600万円となります。
住宅取得控除は自分の為の住宅取得に係る控除なので、ご主人の控除対象住宅ローンは1,600万円となり、控除額は1%ですから16万円が限度となります。
奥さんは1,080万円が控除対象なので10.8万円が控除の限度額になります。
では、オーソドックスに年間所得比率で持分割合を決めていた場合の、住宅取得控除はどのようになるでしょう。
年間所得比率を考慮した持分割合の住宅取得控除
ケース2では、ケース1と同じように
- 取得した住宅価格は4,000万円
- 頭金の400万円はご主人の預金から
- 住宅ローンは3,600万円
としますが、持分割合は次のように決めます。
年間所得比率は、ご主人7に対し奥さんは3です。
そこで住宅ローンの返済割合を7:3で割り振ります。
奥さん=1,080万円
ここはケース1と同じです。
頭金の400万円はご主人の預金から出したので、住宅取得の資金拠出割合は次のようになります。
ご主人=2,520万円+400万円=2,920万円
奥さん=1,080万円
ご主人7.3:奥さん2.7
概ね7割:3割の割合になりました。
住宅取得控除の対象額は、ご主人が2,520万円なので、25.2万円が限度額です。
奥さんは10.8万円とケース1と変わりませんが、ご主人の限度額が住宅ローンの負担分満額まで上昇します。
住宅取得控除の面からも、持分割合は年間所得割合と資金の拠出割合で決める、オーソドックスな方法がよいことが分かります。
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