不動産の売買契約で契約の前に「重要事項」について、文書による説明を行います。この文書を「重要事項説明書」と言います。
中古住宅を購入する場合は、まず重要事項について「宅地建物取引士」から説明を受け、購入しようとする住宅について十分理解し納得のうえ売買契約を締結します。
この記事では売買契約の手順と、契約前に行う重要事項説明について解説します。
売買契約の準備
売買契約の前には次にあげる売買取引に関係する取引条件を定めます。
- 売買価格
- 手付金額と手付解除期限
- 契約違反の場合の違約金額
- 売買代金の決済と引渡しの期限
- ローン不承認の場合の契約解除に関わる条件
- 契約不適合による契約解除に関わる条件
- その他特約事項
これらの条件を売主・買主双方で協議し合意に至ると売買契約の締結になりますが、売買契約締結前に「重要事項説明」を行います。重要事項については「重要事項説明書」というフォーマットに則った書面または電子データが作成され、宅地建物取引士が説明を行います。
説明が終わり双方が納得すると売買契約締結となりますが、必ずしも売主・買主が対面により契約するとは限りません。
現在は電子契約が認められているのでリモートでの契約も可能ですし、書面を作成した後に「持ち回り」で契約することもあります。
売買契約は仲介する不動産会社が準備をし、宅地建物取引業法に則った手順に従い進めていきますが、締結までに不安な面や不明な点があれば納得がいくまで説明を求めることが重要です。
重要事項説明とは
重要事項とは主に次のようなものになります。
- 中古住宅の土地と建物についての面積など
- 売主と登記されている現在の所有者
- 登記されている権利
- 法律上の規制など
- 土地に接する道路
- 上水道などの設備
- 土砂災害などの危険性
- 津波や水害の危険性
- 石綿使用や耐震性能に関する調査の記録
- 住宅性能や現在の建物状況
- 住宅の維持保全に関する書類
- 取引条件や契約解除
- その他特記事項
- 売買契約書の案
かなり専門的な事項に関する説明もありますが、およそ1時間~2時間ほどの時間を要して説明を受けます。
万が一、重要事項説明を受けて不明な点や不安な点があれば、再度の説明や追加説明を要求するなどして、納得がいかなければ契約締結を延期することも必要になります。
一般的には売買契約の当日、契約締結の前に説明を受けそのまま契約手続きに入ってしまうので、万が一不明な点や不安な点があっても、契約を先伸ばすことは非常に難しいものがあります。
そのような状況が予想されるような場合は、契約の数日前に重要事項説明を受けることも可能です。遠慮せず仲介する不動産会社に申し入れするようにしましょう。
また、重要事項説明の時に「インスペクション」について説明を受けることがあります。しかしながらインスペクションの説明を重要事項説明時に受けた場合、その後インスペクションを実施することは難しく、インスペクションについての説明そのものが形式的なものになってしまいます。
購入の際にインスペクションを希望する場合は、内覧時など購入検討の時点で行う必要があり、インスペクションについての知識はもっと事前に知っておくべきものなのです。
売買契約の流れ
重要事項説明では、最後に売買契約書についても説明があります。この段階では売買契約書はまだ「案」ですが一通り説明が終わり、修正点などがなければ正式な売買契約書になります。
契約が対面や持ち回りなどの電子契約以外の方法であれば、売主・買主が売買契約書に記名し押印します。さらに契約書には印紙を貼付し、それぞれの印鑑で消印をします。
契約書は本来は2部作成するものですが、一般には1部作成し買主が原本を保管し、売主は写しを保管します。契約書が1通になるので印紙代が節約できるのです。
契約書の記名・押印が終わると買主は売主に手付金を支払います。手付金は代金の支払いを行う「決済・引渡し」の期日まで売主が預かります。
手付金の支払いにはいくつか目的がありますが、契約が成立した証しとしての意味と、契約がキャンセルされた場合の違約金の意味もあります。
「決済・引渡し」の時に手付金は、いったん買主に返還するのが建前であり、買主は手付金と手付金以外の残代金を合計して「決済」するのが本来です。しかし一般的には、手付金は売買代金の一部として充当するので、買主は手付金以外の「残代金」を支払い決済が完了します。
決済・引渡しの流れ
決済・引渡しにより売買取引がすべて完了するのですが、売買代金の支払い以外に重要な手続きをこの時点で行います。
- 住宅ローン借入のための抵当権設定
家の購入に住宅ローンを利用する場合、金融機関は購入する家と土地に抵当権の設定を行います。決済は融資された資金を使用しますので、住宅ローンの融資を実行し代金を支払います。
この時点で抵当権の設定登記をするための書類が準備され、買主が記名押印した書類を司法書士が預かり、所有権移転登記と同時に抵当権設定登記の申請をする流れとなります。 - 設定されている抵当権の抹消登記
購入する物件に抵当権が設定されたままの場合、抵当権の抹消と同時に所有権を買主へ移転します。そのため売主は抵当権抹消のための書類に記名押印し、司法書士はこの書類を預かり、所有権移転と同時に登記申請を行います。
以上のように、決済・引渡しの時点で登記関係の手続きも同時に行い、所有権移転が間違いなく行われること確認して引渡しが完了します。
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