不動産を売却した時に関係する税金は“譲渡所得税”です。売却によって所得(利益)があった場合には、所得税が課税されます。
逆に所得(利益)が無く損失があった場合には、課税はされず申告すら必要がありません。
所得があるか損失があるかは譲渡所得の計算により算出しますが、計算の根拠になる書類は何年ぐらい保管しておく必要があるのでしょうか。
譲渡所得計算に必要な書類
譲渡所得を算出するには次のような書類が必要です。
- 不動産を売却した時の書類
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売買契約書と次に示す費用の領収書
- 不動産仲介手数料
- 印紙代
- 借家人に支払った立退料など
- 売却した物件に建っていた建物の解体工事費
- 売却の為に行った土地の測量費用
- 売買契約締結後にさらに有利な条件で売却する為に支払った違約金
*建物の解体によって“建物の損失額”が譲渡費用とみなされる場合があります。
- 売却した不動産を取得した時の書類
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不動産を取得した時の売買契約書と次に示す費用の領収書
- 不動産仲介手数料
- 印紙代
- 建物のリフォームなどの工事費
*不動産を売却する為に土地を造成した場合は、取得費として認められる場合があります。
不動産を売却した場合の譲渡所得の計算には、売却した時の書類に加えて取得した時の書類が必要です。
取得した時の書類が紛失などでない場合は、譲渡所得の計算の際に“原価”に相当する取得費は、売却価額の5%と計算されるので、必ず所得が生まれてしまうので取得時の書類は大切に保管しておかなければなりません。
取得時の書類と売却時の書類の保管期限
税金には時効があります。
時効期限を経過すると納税義務は消滅します。
- 申告を期限内に行った税金の時効は3年
- 申告を期限内にしていない税金の時効は5年
とされています。
ただし、贈与税の時効は6年、脱税に関しては7年のようです。
最低5年間は売却時と取得時の書類は保存が必要
所得計算をして損失となった場合は申告の必要がありません。
マイホームを売却し居住用財産の買換えをした場合は、売却時に出た損失については、他の所得から控除されるので申告しますが、買換えの無い場合は所得控除が無いので申告はしません。
不動産の売却の事実を税務署が何らかの方法で知った場合、所得があったのではと推測されるケースでは、問い合わせがくることがあります。
「譲渡損失になったので申告してません」と答えるのですが、損失があったことの証明ができなければ大変なことになります。
税務署の問い合わせに堂々と答えられるように、最低でも5年間は書類一式を保存しておきましょう。
*個人の場合を想定しています、法人や事業に関する不動産や領収書関係は7年間の保存が必要です。
宅建業者が保存すべき書類の保存期間
上に記載したことは売主や買主の場合に該当することですが、税金面だけでなく、宅建業者には業法で決まっている保存期間があります。
宅建業法49条では取引の帳簿を備え付けることが義務付けされています。一般的には取引台帳を準備して、取引のあった都度必要事項を記載しています。
必要事項とは以下のような事柄です。
- 取引の種類
- 契約当事者及び代理人の住所と氏名
- 取引に関与した宅建業者の名称
- 宅地の場合は、現況地目、位置、形状その他当該宅地の概況
- 建物の場合は、構造上の種別、用途その他当該建物の概況
- 売買金額や賃料、交換物件の品目と交換差金
- 報酬の額
- 宅建業者が自ら売主である新築住宅の場合
- 引渡し年月日
- 住宅の床面積
- 瑕疵担保負担割合
- 瑕疵担保責任保険法人の名称
- 取引に関する特約事項など
重要事項説明書や売買契約書ではなく帳簿の保存義務が定められています。
期間は5年間、宅建業者が自ら売主である新築住宅の場合は10年間です。
実務的には、将来トラブルが発生して訴訟などになった場合、ほとんどは重要事項の説明義務が争われることになるので、重要事項説明書の業者控え原本は保存しておく方が望ましいでしょう。
しかも期間は20年間(不法行為による損害賠償の消滅時効)としたいところです。
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