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土壌汚染や地下埋設物など地歴調査が必要な売買契約と重要事項説明

不動産売買では地歴調査が必要な場合があります。
地歴調査とは対象となる土地の履歴、つまり取引される土地がこれまでどのように利用されていたか、利用の仕方によって土壌汚染や地下埋設物などがある可能性もあり、物件の引渡し完了後に重要事項説明時に説明されていなかった問題が発見されるとトラブルになることがあります。

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土壌汚染と地下埋設物の瑕疵担保責任

土壌汚染対策法では土地の所有者に対し二つの義務を定めています。

  1. 有害物質使用特定施設の廃止の届出
  2. 一定規模以上の土地の形質変更の届出

この届出によって都道府県知事は、土壌に汚染のおそれがある又は健康被害が生じるおそれがあると判断した場合、土壌調査を行うことを命令します。
この命令が発出されると土地所有者には土壌汚染状況調査の義務を負います。

土壌汚染対策法が直接、不動産売買契約に影響を与えることはありませんが、取引対象となっている不動産が、上記の届出義務に該当する場合は、注意が必要です。

有害物質使用特定施設の廃止の届出義務がある施設として利用されていた不動産の売買

土壌汚染対策法が施行されたのは平成15年2月15日からです。
売買対象の土地上に有害物質使用特定施設が建っていたと思われる場合、「廃止の届出」がされているかどうかを確認する必要があります。
ただし、廃止が平成15年2月15日より前であると法施行前ですから届出がされていません。

  • 特定施設であったか否か
  • 廃止の届出の有無
  • 施設廃止の時期

これらについて調査して重要事項説明書に記載する必要があるでしょう。

調査方法は次のような方法によると考えられます。

  1. 都道府県の担当部署にて「廃止届」の確認をする
  2. すでに建物が建っていない場合は「閉鎖謄本」により解体した時期を特定する
  3. 建物が建っている場合は、売主へのヒアリングと周辺への取材により事業を廃止した時期を特定する

水質汚濁防止法で定める特定施設にはたくさんの種類があります。
参照 》 特定施設一覧

ほとんどは準工業地域や工業地域、工業専用地域に建つような工場ですが、住宅地の中にあるような施設にも特定施設になっている場合があります。
以下は住宅地に存在する可能性のある特定施設をピックアップしたものです。

  • 畜産食料品製造施設
  • 水産食料品製造施設
  • 野菜・果物の保存食料品製造施設
  • みそ・醤油・食用アミノ酸・グルタミン酸ソーダ・ソース・食酢の製造施設
  • パン・菓子の製造で使われる“粗製あん”の沈殿槽
  • 米菓・麹の製造で使われる洗米機
  • 飲料製造施設
  • 動物系飼料・有機質肥料の製造施設
  • 動植物油脂の製造施設
  • イースト製造施設
  • でん粉・加工でん粉の製造施設
  • ぶどう糖・水あめの製造施設
  • 麺類製造の湯煮施設
  • 豆腐・煮豆製造の湯煮施設
  • 新聞業・出版業・印刷業又は製版業で使われる自動式フイルム現像洗浄施設と自動式感光膜付印刷版現像洗浄施設
  • 旅館業に該当する施設の厨房・洗濯・入浴施設
  • 500㎡以上の共同調理場
  • 360㎡以上の弁当仕出屋又は弁当製造
  • 420㎡以上の飲食店
  • 洗濯業の洗濯施設
  • 写真現像業の自動式フィルム現像洗浄施設
  • 300以上の病床数のある病院に設けられた厨房・洗浄・入浴施設
  • 自動式車両洗浄施設
  • 科学技術に関する研究・試験・検査・専門教育を行う事業場に設けられた洗浄・焼入れ施設
  • コインランドリーに設置されるトリクロロエチレン又はテトラクロロエチレンを使用する洗浄施設

以前の土地利用法を調査する方法

更地や駐車場あるいは家庭菜園として使われている土地であっても、以前、特定施設や地下室があったりなど、土地の履歴に注意したいケースがあります。

土地の利用履歴は古い住宅地図で調べます。古い住宅地図は都道府県立図書館にだいたいあるようです。
法務局で閉鎖謄本を調べるのがもう一つの方法です。

対象となる土地の全部事項証明から、分筆の履歴をまず調べます。

地番Dの土地が、Aから分筆してB → Bから分筆してC → Cから分筆して → Dとなっていた場合、A、B、Cの地番を家屋番号として申請して、該当する建物の閉鎖謄本があるかどうか調べます。

分筆前の地番に建物があった場合、その建物の位置と地番Dの位置関係を、建物図面から確認します。
分筆や合筆が繰返されているような場合は、複雑でわけが分からなくなったりしますが、地道にひとつひとつ調べていくと、土地の利用履歴の全体像が見えてきます。
ただし、閉鎖謄本で調べる場合は登記されていたことが前提です。未登記の場合はまったく記録に出てきませんので、100%確実とは言えません。

残る方法は周辺での地道な取材です。
徹底的に調査したことが資料として説明できていれば、万が一の場合トラブルになることを回避できるように思います。

実務上は、以前の土地利用に関し、土壌汚染や地下埋設物の可能性が考えられる場合、詳細な調査によるべきところですが、売主の負担増となる可能性もあり、調査未了を容認事項として特約条項に追加することが一般的に行われています。

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