欠陥住宅とは、住宅が本来備えていなければならない性能や機能が無いか、著しく低下しており、健康的で快適な生活を送ることのできない住宅を言います。
注文住宅、建売住宅、中古住宅、新築分譲マンション、中古マンション、住宅市場にはこのような物件が存在しており、誰にもこのような物件を取得してしまう危険性があります。
欠陥住宅の取得を防止する物件の見分け方について解説します。
こんなにあった欠陥住宅の事例
欠陥住宅の代表的な事例をあげてみます。
- 地盤改良杭を施工したが支持地盤まで到達せず、引渡し後に不同沈下が発生し、2年後に傾斜が6/1000を超えた
- 1階屋根と2階外壁の取合い部の納まり不備により雨漏れが発生し、外壁通気層を伝わった雨水が土台に到達し、土台と大引きを腐らせ1階床下地に大量のカビが発生
- 設計通りの筋交いが施工されておらず、強風のたびに揺れが生じていた
- 引き渡し後5年目になり、増改築のための点検調査を行った際、小屋裏に施工されるはずだった断熱材が一切無いことが判明
- 引渡し後10年目に増築計画が持ち上がり、外壁の一部を解体したところ“通し柱”の外側半分に腐れが生じていた、原因は透湿防水層の施工不備により、柱面に雨水が侵入していた
- 暴風雨のたびに窓廻りから雨漏れが発生、外壁を解体し点検の結果、木製サッシの取付け方法に誤りがあった
- 晴天がつづいている冬、2階天井から水滴が落ち点検した結果、小屋梁の軽量鉄骨結露が発生していた
事例を挙げるとキリが無いかもしれませんが、これまでに出会った欠陥住宅の一例です。
“欠陥”とは言っても、施工業者が故意に手抜きをしたとか、根本的に施工能力が劣っていたといった事情はありません。
うっかりミスであったり、施工不備に気がつかずに工事を進めた結果、こんなことになってしまったというケースがほとんどです。
悪意が無いとは言え欠陥住宅に変わりはありません。所定の性能が無いものは補修工事によって正常な状態にしてもらわなければなりません。
事例の中には補修工事が不可能な為、契約解除により施工会社に住宅を買取ってもらった物件もありました。
不同沈下によって傾いた住宅は、水平に直すのに1,000万円近い費用を施工会社が負担しています(ただし10年保証の保険適用なので、実質負担はわずか)。
新築でも中古でもこのような事例はたくさんありますので、購入前や引渡し前に欠陥住宅かどうかの見分け方が大切なことです。
プロがやってる欠陥住宅の見分け方
実際に行っている住宅の点検・診断の方法をご紹介します。
- 基礎の沈下や傾き
- 建物の傾斜を調べます。下げ振りでは縦方向の傾斜しか分からないので、レーザーレベルで水平と垂直を点検します。傾斜勾配が3/1000以内であればOKとしています。3/1000~6/1000の場合は原因の究明と、沈下が進行形か沈下は止まっているかの判断が必要なので、経過観察します。6/1000以上の場合はNGと判断します。
- 基礎の健全性
- 基礎のひび割れ(クラック)を調べます。ひび割れの幅と深さをクラックスケールで計測して、構造クラックかどうかを確認します。金属探知機で鉄筋の有無と間隔も計測します。
最近は外張り断熱や基礎断熱の住宅が多くなっていますが、その場合は外側からの調査は出来ませんので、床下点検時に基礎の内側から調査します。 - 床構造のたわみや剛性
- 床大引きや床梁のサイズが小さい場合は、たわみや揺れを感じます。また腐朽がある場合も弾性が無くなっているので、大きな揺れを感じます。調査方法は立位で脚を曲げ伸ばしして床に体重を掛けるようにします。
- 床下の乾燥と断熱材
- 床下点検口から床下に入り乾燥状態と断熱材の充填状況を確認します。土間床工法や外張り断熱が多くなっており、床下通気の無い建物もありますが、床下がある場合は乾燥状態の確認は必須です。
- 雨漏れの点検
- 過去に雨漏れがあったかどうかを確認します。天井や外壁側の壁面を目視で点検します。シミや変色、壁仕上げの剥離やひび割れなどから雨漏れの痕跡を見つけることができます。
- 小屋裏の点検
- 木造住宅の場合は必ず小屋裏に入ることが出来ますので、小屋裏の乾燥状態、断熱材の充填状態、雨漏れの痕跡を確認します。
- 外壁の点検
- 外壁の仕上げ材によって点検方法や判断方法は変わりますが、外壁素材の劣化、変形、反り、ひび割れ、剥がれ、継ぎ目のひび割れや劣化などから、風雨や紫外線などの外部環境に起因する経年劣化か、室内側から流入する湿気や上部からの雨漏れなどによる劣化か判断します。
- 屋根の点検
- 屋根葺き材の劣化や施工状態を確認します。中古物件の場合はもちろん新築物件の場合でも、仕上げ状態によっては将来の雨漏れの原因になるようなものもあります。
以上のような部分を点検しますが、『これはおかしいぞ』と欠陥を疑うケースもあります。
欠陥住宅にはその程度によってレベルがあります。
- 建築基準法違反となる悪質な欠陥
- 稚拙な施工技術による性能低下
- 施工管理不備による性能低下
低レベルの欠陥だからと言って見過ごすことはできませんが、著しい性能低下が考えられるか“受忍限度内”かは状況によって判断しています。
住宅は積水ハウスやミサワホームなど、工業化が進んだ住宅もありますが、現場作業の割合が大きい在来工法の住宅がまだまだ多く、人の手による作業によって作られる工程では、完璧な施工を期待できないところもあります。
明らかに“欠陥”と判断されるものよりも、微妙な判断になるケースのほうが多く、点検を依頼する方との情報共有が大切なことです。
中古住宅におけるホームインスペクションの活用
2018年4月から宅地建物取引業法の改正により、上に書いたような住宅の点検が制度化されました。
中古住宅の売主・購入希望者に対し、「既存住宅の調査」に関する情報提供をすることが義務化されました。
実際に調査を行うかどうかは任意ですが、既存住宅の調査=ホームインスペクションについての周知を図るようになりました。
中古住宅を購入しようとしている方へは、仲介する不動産会社からホームインスペクションについての説明があると思いますので、数万円の費用がかかりますが安心して中古住宅を購入することが可能になる制度です。
活用することを検討してみて下さい。
ホームインスペクションについては 既存住宅状況調査とはを参照してください。
コメント